(上) 増えるグループ
白昼窃盗 「逮捕してみい」
居直る少年 謝る親
暴走族と警官隊が衝突した一九九九年のえびす講騒動から約六年。住民や警察、行政の取り組みで暴走族は減り、都心での集会も見られなくなった。しかし、集団で犯罪に走る低年齢の非行少年が問題になっている。小学生まですそ野を広げる非行。今、学校、地域、家庭が子どもたちに向き合い、手を携えて考え、行動しなければ、手遅れになりかねない。
「証拠あるんか。逮捕できるもんならしてみいや」。中学二年、十四歳の少年は広島中央署員に言い放ったという。昨秋から今春にかけ、広島市中、西区を拠点にバイク十三台を盗み、無免許で暴走を繰り返したとされるグループのメンバー。中には小学生もいた。
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広島中央署が摘発した中学生の少年グループから押収したバイク盗に使われたドライバーなど
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少年らは市内の別の学校に通い、夜な夜な遊ぶうちに仲間となった。「走るために」。先輩らから聞いた手口、マイナスドライバーを鍵穴に突っ込むなどして白昼、バイクを盗んだという。
■ 小学生を利用
中央署の調べに、少年らは口裏を合わせたかのように十四歳未満で逮捕されない小学生に責任をなすりつけたという。謝る親の横で居直る少年に署員は不安、危機感を覚えたという。「礼儀を知らないこともだが、悪いことをしたという自覚がないことも問題。今、対応を考えていかないと取り返しがつかない」
粗暴化にも懸念が広がる。同署では六月までに集団リンチの中学生七人を傷害容疑で逮捕した。「先輩風を吹かせた」というささいな理由で、遊び仲間の一歳上の先輩に二十分近く、殴るけるの暴力を振るった。
■ 「族」に属さず
県警少年対策課によると、えびす講騒動のあった九九年以降、暴走族は激減。昨年末は九九年と比べ、二十六グループ、三百九人少ない十八グループ、百十九人となった。が、暴走族に属さない非行少年グループは現在、百十団体、約九百人で、増え続ける。
低年齢化も目立つ。三年前から中学生の逮捕、補導数が高校生を上回り、昨年は中学生が千三百七十二人と高校生を百十七人上回った。小学生の補導数も三年前から年々増え、昨年は二〇〇一年と比べ九十四人多い二百十一人になった。
県警少年対策課は「暴走族のような上下関係や上納金に煩わしさを感じ、自由な立場を好んでいる」とみる。暴走族の予備軍になる危険性も含むと警戒する。前田英雄次席は「放置すれば凶悪になる恐れもある。暴走族対策と同様、立ち直り支援を含めた総合的な対策が必要」と指摘する。
(2005.7.29)