中国新聞



(中) 深まる孤立

夜たむろ「行くとこない」
暴走族への入り口

 授業を抜け出して集団で喫煙する、騒いで授業を妨害する…。広島市内のある中学校では二、三年前から荒れが目立ち始めた。校舎の壁などにはペンキの落書きがあり、廊下には菓子の食べかすが散らかっている。

生徒の手で壁一面に落書きされた校舎。生徒や地域住民らで消した

■ 遅い親の帰り

 「一人の時は注意にきちんと耳を傾けてくれるんです。でも、集まると…。自分がやったことでも『うちらじゃないよ』と、知らん顔です」。校長はため息をつく。

 別の中学校には夜になると、住民から「生徒が騒いでうるさい」などと苦情の電話が相次ぐ。喫煙や万引をしているとの通報も。校長は「他の生徒への影響も計り知れない。家庭や教室の居場所づくりが大切だが、どこからどう道筋を付けたらいいのか」と悩む。

 集まって問題行動を起こす背景に、孤立した姿ものぞく。深夜営業の店の前や河川敷に集まっていた十数人の少年に聞くと、親が仕事で忙しく、夜遅くまで帰らないという家庭が目立つ。

 「家に帰っても親はおらんし、みんなとおる方が楽しい。他に行くとこもないし」と、夏休みの深夜、中区のコンビニでたむろしていた中学生の四人組。学校も「気の合う子が少ない。先生はケータイはいけん、髪は染めるなと、うるさいだけ」。四人は学年が異なる子や、違う学校に通う子もいる。夜な夜なたむろするうち仲良くなった。こんな集まりが非行に走る例も多い。

■ 「関係」手探り

 中区保護司会の炭谷寛司事務局長は少年に多く接してきた経験から「一人一人は良い子。でも寂しい思いをするうちに居場所を求めてグループに入り、楽しそうなことで寂しさをまぎらわす子もいる。場合によっては非行や犯罪につながるんです」と指摘する。

 ある危険なケースを広島北署で聞いた。深夜集まったり、バイク盗をしたりしていた中学生が暴走族に勧誘された。暴走族は服装や髪形、髪の色などを見て声を掛ける相手を決めていたという。

 元暴走族の少年(17)は暴走族時代の苦しさを振り返る。中学一年の時、先輩にあこがれ非行グループに入り、一年後、ずるずると暴走族に加入。「面倒見に脅されるなど、つらいことばかりだった」。今も高校には行かず、定職を持てない状況が続いている。

 「昔は悪いことをしたら生徒同士注意し合っていた。今は関係が希薄になってきた」。ある中学校長は指摘する。学校や家庭、地域…。子どもたちは、人とのつながりを求めながらも、孤立を深めている。

(2005.7.30)

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