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たゆまず歩む 地域とともに 中国新聞

「再生 安心社会」

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第5部 明日のために

3.外国人犯罪

−不安除く具体策必要−

 国民の八割以上はこの十年で治安は悪化したと感じ、うち半数余りは「外国人犯罪の増加」が原因と受け止めている―。

 昨年十二月に内閣府が国民三千人を対象に実施した「治安に関する世論調査」の結果だ。

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在留期間の更新手続きなどで外国人が訪れる広島入国管理局の窓口。日系人などには昨春から犯罪歴がないと証明する文書提出が義務づけられた

▽偏見拡大を危惧

 ペルーから偽造パスポートで来日した男が起こした木下あいりちゃん事件、中国人の元専門学校生らによる福岡市の一家四人殺害事件…。凶悪事件が国民を動揺させ、外国人への不安をかき立てる構図が浮かび上がる。

 だが、元法務官僚で、外国人受刑者の処遇も担った龍谷大法科大学院の浜井浩一教授(犯罪学)は「善良な外国人まで色眼鏡で見てしまう。偏見が広がることは国民にも不幸だ」と危惧(きぐ)する。

 国内で刑法犯として摘発される外国人の割合はここ数年、全体の2%台と横ばいが続く。浜井教授は「本当に悪質な外国人はごくわずか。言葉がうまく話せず、帰国が困難な人も多い。こうした偏見が広がればますます居場所を失う外国人が増え、犯罪も増える」。善良な外国人をきちんと受け入れ、犯罪集団をどう排除するかが、国家としての大きな責務になっていると指摘する。

▽増える「逃げ得」

 だが、外国人への国の対応が不十分だから、国民は不安を感じているのではないか。例えば、国外に逃亡した犯人。処罰が難しい「逃げ得」の現実をどうするのか。

 警察庁によると、昨年末時点で国外逃亡したまま処罰されていない外国人は六百五十六人。十年前の約三倍に膨らんでいる。

 同庁などは母国の法で処罰できる国外犯処罰規定の適用などを関係国に要請しているが、一九九九年以降、中国や台湾、ブラジルなど六カ国・地域の四十人に適用されただけだ。

 広島県警の幹部は、あいりちゃん事件の容疑者逮捕の時を振り返る。容疑者に海外逃亡をさせないため、海空港手配を実施したのだ。「手配で容疑者の情報が漏れる可能性はあった。が、犯人を国外に逃がすことだけは絶対に避けたかった」

 あいりちゃん事件を教訓に、法務省は、昨春から日系人とその家族に入国時や在留期間の更新の際に犯罪歴がないと証明する文書の提出を義務づけた。入管法改正で、入国時、原則十六歳以上には指紋採取を求め、顔写真を照合する仕組みも年内には動きだす。

 だが、それでも、あいりちゃん事件の後、現場の広島市安芸区などでは外国人に不安を抱く日本人は多く、日系人や南米人も白眼視されているのではとの悩みを抱える。

 国際化時代の新たな関係を築くには、国が事件を教訓に、どういう共存策を進めるのか。具体的で分かりやすい仕組みを国民に示し、不安を取り除く努力が欠かせない。(門戸隆彦)

2007.6.16