「もったいない」−。皆さんはどんな時に、この言葉を聞きますか。水を流しっぱなしにしていた時、食べ物を残した時、まだ使える物を捨てた時、大事にしていた物をなくした時…。環境を気にするだけでなく、物への愛情を寄せるがために、出てくる言葉です。
ケニアの環境問題活動家でノーベル平和賞受賞者の故ワンガリ・マータイさんが、この「もったいない」を、平和につながる共通の言葉にしようと世界に呼び掛け、一気に広がりました。
便利さを追い求め、紙コップやカイロなど当たり前のように使い捨てていませんか。今の生活をちょっと見直し、肩肘張らずに明るく楽しく「もったいない」をやってみましょう。環境を破壊し、資源を求めて争う社会をなくすことにつながるはずです。
絵本「もったいないばあさん」 真珠まりこさん
「全てのものに命。大切に」
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絵本「もったいないばあさん」シリーズを2004年10月から出している真珠まりこさん。子どもたちがもったいないことをしていたら、一見怖そうなおばあさんが「もったいなーい」と言いながら現れて、昔ながらの生活の知恵を授ける話です。 絵本作りのきっかけは03年、当時4歳の息子にもったいないの意味を聞かれたこと。他の言葉で置き換えるのが難しく、絵本の方が伝えやすいと感じました。絵本は息子のお気に入りになりました。 「『もったいない』は、命を大切にすること」と真珠さん。全てのものに命があり、粗末にしてはいけない、という仏教の教えに基づいているそうです。 イチオシの知恵は、ユズの種を焼酎に漬けたかゆみ止め。真珠さんは「将来、もったいないばあさんみたいになりたい」と言います。自然に感謝し、好きなものを大事に使って満足する暮らしが理想だそうです。(中3・寺西紗綾、石井大智) |
積極実践 三次の麻野恭子さん
米のとぎ汁で食器洗い / ユズの種を漬け化粧水
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三次市布野町に「もったいない」実践を積極的にしている人がいます。主婦の麻野恭子さん(64)。54歳で退職したのを機に、便利になり過ぎた今を見直そう、と始めました。 「水を大事にしなさい」との母の言葉を思い出し、シャワーの使用をやめたり、米のとぎ汁を食器洗いに使ったりしています。ゆずジュースなどを作る団体が使わなかったユズの皮や種をもらい、皮はマーマレード、種は焼酎に漬けて化粧水に。梅干しに入れて残ったシソは、細かく刻んで干してふりかけにします。大根の葉も小さく切って、ごまやちりめんと炒めて使います。「命に感謝して、全部いただくことが大切」と熱く語ります。 麻野さんは「布野の食と脱温暖化を考える会」の会長もしています。布野小の児童たちと廃油でろうそくやせっけんを作ったり、夏にゴーヤーで緑のカーテンを作ったりしています。麻野さんは「母や近所のお年寄りに聞いた『もったいない』の知恵を次世代に伝えたい」と考えています。(高2・植木史織、中2・井口雄司) |
MOTTAINAIキャンペーン
「マイボトル」「マイ傘」推進
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物に対する感謝や慈しみが込められた「もったいない」を広めよう、と行われているMOTTAINAIキャンペーンがあります。ペットボトルより「マイボトル」を使おう、と人気タレントやデザイナーによるおしゃれな柄のボトルを販売。ビニール傘ではなく「マイ傘」の使用なども呼び掛けています。 キャンペーンは2005年に始まりました。ノーベル平和賞を受賞したケニアの故ワンガリ・マータイさんが同年2月に来日した時、「『もったいない』の言葉には物への畏敬(いけい)の念がある」と感動。世界共通の言葉として広めたい、と考えました。これを日本の企業がサポートしてスタートしたのです。 商品は、おしゃれで明るい色が使われています。キャンペーン事務局(東京)の安保文子さん(37)は「堅苦しく考えず、明るく楽しく続けてほしい」と話します。実践のこつは「買い物する時に、長く使えるか考えるといい」と教えてくれました。(高2・野中蓮) |
ジュニアライター ・・・ これまで ・・・ |
母に習い、だしを取った後の昆布をつくだ煮にする植木さん |
昆布は最後つくだ煮に
自分たちや家族がやっている「もったいない」実践。家族では、母親が最も積極的に取り組んでいるようです。「母は、だしをとった後の昆布をつくだ煮にします。食べやすい大きさに切り、水としょうゆ、酒を加えて煮詰めるだけです」(高2・植木史織)。「母は、大根とニンジンの皮できんぴらを作ります」(中3・寺西紗綾)。料理の中に工夫が見られます。
服などをリサイクルする例も。「母は、僕と姉が着なくなった子ども用の服や自転車を、近所の家や幼稚園に譲っています」(中2・井口雄司)
車持たない
家族で実践する人もいます。「家族全員が居間で過ごしたり、続けて入浴したりしています」(高2・野中蓮)。車を持たない家もあります。「購入費や維持費を考えると車は要らない、との母の方針」(中3・石井大智)。重たい物は配達してもらうそうです。
家の裏の畑に生ごみを入れる石本さんの妹 |
10代がすぐにできるのは、電気の節約でしょうか。「朝4時半ごろ起きて歯磨きと洗顔するのに、電気をつけません。洗面所への階段や廊下も暗いままにしています」(高1・城本ありさ)。
暖房使わず湯たんぽ
勉強や寝る時に湯たんぽを使うのも効果的です。「勉強する時、プラスチック製の湯たんぽを膝に載せています。12月半ば頃まで暖房なしで過ごせます」(高2・矢田瑞希)。「湯たんぽを使い出してから、寝る前にエアコンで部屋と布団を温めなくなりました」(高1・井上奏菜)
「私は家の裏にある畑に生ごみを捨てています。その畑で水菜やネギを作っています」(高1・石本真里奈)。自宅に庭や畑があれば、生ごみの堆肥化もいいでしょう。
僕たち私たち、宣言します! |
・暖房器具の使用時間を短くします。(植木) |
・見たい番組がなければ、テレビをつけずに過ごします。(野中) |
・家だけでなく、学校でも節電を心がけ、教室を移動する時など率先して電気やエアコンを消していきます。(矢田) |
・割り箸をやめてマイ箸で弁当を食べます。(石本) |
・湯たんぽに使うお湯は、新しく沸かさずに、お風呂の残り湯を使います。(井上) |
・熱湯に漬けると繰り返し使える「エコカイロ」を愛用します。(城本) |
・使っていない家電のコンセントをこまめに抜きます。(石井) |
・テレビを見ながら勉強する時間を減らします。(寺西) |
・洗顔や歯磨きの時、水を流しっ放しにせず、洗面器やコップにためて使います。(井口雄) |