今回は「障害者が働くこと」について考えました。「障害者がもらう『お給料』が低いって聞いたことがある」。「作業所で作られている商品を、もっと買いたいと思えるものにできないだろうか」。そう考えました。
福祉施設を運営している優輝(ゆうき)福祉会(庄原市)の協力で、新たに販売するミネラルウオーターの商品名やラベルのデザインを、障害がある人たちと考えました。
「どう接すればいいんだろう」。最初は戸惑いました。しかし、交流を通し、互いに率直な意見を出し合うことで気付きました。「障害のあるなしは関係ないんだ」
にもかかわらず、障害者が作業をして受け取る「工賃」は月に1万数千円しかありません。「労働」とみなされていないのです。民間企業への就職が難しい現実があることも分かりました。
優輝福祉会(庄原)+ジュニアライター 商品名とラベル考案
庄原市の優輝福祉会は今夏、江の川の支流、田総川源流近くで採ったミネラルウオーターを発売予定です。それに併せ、障害者とひろしま国ジュニアライターが、商品名とラベルのデザインを考えました。
昨年末から1月中旬の間の3日間、一緒に作業しました。 初日は理事長の熊原保さん(57)にインタビュー。「障害がある人が作ったからという『情け』で買ってもらうのではなく、きちんと稼げるようにしたい」と聞きました。障害者とのやりとりについては「障害のない部分を見て対等に接して。私は障害のある人とけんかすることもあります」と教えてくれました。 続いて、脳性まひで車いす生活の瀬川さん、堀江さんたちと商品名について意見交換。まろやかさが特徴である点を踏まえ、「奇跡の水とかインパクトがあるといい」と瀬川さん。堀江さんも「ミラクルウオーターがいい」と続きます。 2日目、ライターは中国山地の自然などをイメージした30の商品名やデザイン案を発表。ライターの岩田さんは「kiss水(キッスイ)」を考え、「生粋という意味も込め、混ざりけのなさを表現した」と説明。周りに笑顔のイラストを描き、「障害がある人もないひともみんなが笑顔で過ごせるように」との思いを込めました。 最終日。詩作もする瀬川さんが、ラベルに付ける説明「いのち、輝く優しい水」を考えました。「好きなことややりたいことをしている時、一番命が輝く」と話してくれました。 ラベルは2種類に絞りました。キッスイと庄原市がある備北地域にちなんでライターの末本君が考えた「bihokku(ビホック)」です。両方とも、子どもからお年寄りまでの笑顔を添えることにしました。 「私たちにも得意、不得意がある。一緒に作業し、障害者も健常者も変わらないことが分かった」と熊谷さん。高矢さんは「たくさんの人が障害のある人と接する機会を増やし、偏見をなくしてほしい」と感じました。 一緒に考えたラベルの水は、新たに建設する作業所で障害者がラベルを貼り、箱詰めします。熊原さんは、作業に当たる障害者の工賃を、3年後に1人当たり月5万円出せるよう目指しています。同じ作業所では、これに先駆けて5月から、広島共同募金会の委託で寄付金付きボトルも製造するそうです。 どっちがいい? 投票して 読者の皆さんの投票結果を参考に、ラベルのデザインを決めます。2種類のうちどちらかを選び、簡単な理由をそえて投票してください。(投票は締め切りました。) 結果はこちら >>>>
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パティシエと菓子合作 販売好調 やりがい実感
障害者への工賃を上げようと、社会福祉士でもあるコンサルタント会社テミル(東京)の社長船谷博生さん(45)は、有名な洋菓子職人(パティシエ)と障害者が協力してお菓子を作る「テミルプロジェクト」を2010年4月に始めました。 大阪や北海道の九つの作業所が参加。パティシエのレシピや指導を基にクッキーやマフィンを作り、百貨店などで販売しています。 売れ行きは好調。障害者は働きが認められ、やりがいを感じています。船谷さんは「障害があるから働けないとか、大変だから働かなくていいというのは誤解。意欲を持っている人は多く、働ける環境づくりが必要」と話します。(高1・田中壮卓) |
陳列や接客 48人が活躍 スーパーのフレスタ スーパーのフレスタ(広島市西区)では知的、身体、精神の障害者48人が働いています。2009年から「1店舗・事業所に1人」という目標を掲げています。 仕事は、商品の陳列や接客など他の従業員とほぼ同じ。人事課長の渡辺裕治さん(38)は「できないことがあっても、それ以外にできることがある。障害者の雇用は特別ではない」と話します。 採用では、本人が本当にこの仕事をやりたいかどうかを重視します。採用前に3、4回実習し、向いているかどうかも確認してもらいます。 商品を取りやすい並べ方など障害者の働きやすさを考えることは、買い物しやすい環境づくりにもつながるそうです。 (高3・岩田皆子、中3・来山祥子)
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大阪のコンサル社長・関原さん 消費者目線 ヒットの鍵 障害者の工賃アップに向けた研修会(広島県主催)の講師で、コンサルタント会社インサイト(大阪)の社長関原深さん(40)は「できるものを作るのではなく、消費者がほしいものを作ることがポイント」と指摘します。 レトルトカレーを作る長野県松本市の作業所では女性や子ども向けに辛さを抑え、特産の豚も使用。東京や大阪に販路を広げ、売り上げが倍増しました。 売り場づくりも大切です。高級バターを使った商品でも単に置くだけでは売れません。大きく宣伝した「ポップ」を商品の横に置く方が効果的だそうです。(高2・熊谷香奈) |
課題 企業の雇用不十分/作業 低い所「工賃」
広島県によると、障害者の就労の課題は、民間企業の雇用が不十分▽障害者の作業所で得られる「工賃」が低い、の2点です。 従業員56人以上の企業は雇用者数の1・8%以上の障害者を雇うよう法律で決まっています。県内の達成企業は約半数。障害者への理解不足や、適切な業務を見極める難しさが原因です。就職しても、職場の雰囲気や人間関係から辞める人が少なくないのです。 就労希望の障害者は、作業所で3タイプの訓練サービスを利用できます。(1)雇用契約を結んで働く「就労継続支援A型」(2)雇用契約を結ばない「就労継続支援B型」(3)民間企業への就職を目指す「就労移行支援」です。 (1)は、各都道府県の労働局が定める最低賃金が支払われ、1人当たりの平均は月11万1007円(広島県、2010年度)、(2)は「労働」ではなく「工賃」で、同じく月1万3925円(同)です。3000円を下回ってはいけません。(3)は原則2年間の訓練で、利益が出れば工賃を受け取れます。しかし、訓練後に民間企業に就職できる人は限られているそうです。 (高2・熊谷香奈、高1・井口優香、中2・高矢麗瑚)
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