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省エネ〜東日本大震災を機に私たちができること

暮らし見直し無駄なくそう


地震、津波、原子力発電所の事故と大きな被害をもたらした東日本大震災。「自分たちにできることは何か」と考え始めた直後に、多くのジュニアライターの元に、電気の節約を呼び掛けるチェーンメールが届きました。間もなく、チェーンメールの内容はうそ、との発表が電力会社から出された一方、あながちうそではない、との情報も流れてきました。

本当はどうなのかー。中国電力の人に取材し、電気の節約が有益なことが分かりました。エネルギーが少ない日本で、電気だけでなく、ガスや水道、ガソリンなど幅広く省エネする必要性も知りました。

一人一人ができることはわずかかもしれません。しかし、それぞれ家庭での生活を見直し、実際に省エネに挑戦したことで、無理のない範囲で、被災地のため、日本のためにできることが見えてきました。



 「節電 西日本でも意義」  中電広報・環境部門マネージャー 田中 康義さん

「西日本でも電気の節約はとても意味がある」と中国電力広報・環境部門(報道担当)マネージャーの田中康義さん(47)は強く言います。

中国地方の電気の需給バランスをコントロールしている中電の中央給電指令所(撮影・高1高橋寧々)

東日本は50ヘルツ、西日本では60ヘルツと周波数が違うため、西日本から100万キロワット、中国地方からは10万キロワットしか送れません。しかし私たちが節約すれば、東日本で発電するのに使うガスや石油に回せる可能性があるからです。

中電によると、中国地方の発電方法は、石炭が51%を占めています。原子力は15%で、全国平均の半分程度です。環境に優しいとされる太陽光や風力などの新エネルギーはわずか1%。水力は6%です。しかし、いずれも発電量が天候に左右されやすいそうです。発電と消費のバランスは、中央給電指令所(広島市中区)でコントロールしています。

中国地方には松江市に原子力発電所が2基あります。今はそのうち1基が動いています。今の時期、約700万キロワットの需要のうち82万キロワットを賄っています。

中国地方の原発をなくした場合、ほかの電力で賄えるでしょうか。中電によると、今年は、需要の高い夏にトラブルなどで停止しても短期間なら他の発電で賄えます。ただ、長期間になると石油など発電燃料が不足する恐れが出るそうです。

全国的に見ると、原子力が発電電力量の3割を占めています。「停電しないよう供給するには、火力や新エネルギーなどほかの方法で、賄える見通しが立たないと止められない」と田中さんは話します。

では、消費する量を減らすことはできるのでしょうか。中電ではこれまでも省エネを呼び掛けてきました。しかし、2010年度の販売電力量は、01年度と比べて16・4%増えています。エアコンや冷蔵庫など1台当たりの消費電力は減っていますが、台数が増えているのです。またオール電化住宅や電気調理場の増加も理由の一つです。中電の販売電力量は、これからも毎年1・1%ずつ増える予測です。

田中さんは「今回の大震災をきっかけに、石油や石炭などの資源を輸入に頼っている日本の実情を知り、エネルギーの大切さを考えてほしい」と話していました。(高2・野中蓮、高1・石本真里奈、中3・石井大智)



 エコライフ診断  習慣把握 芽生える自覚


日々の生活でどのくらい省エネができているでしょうか。資源エネルギー庁の外郭団体、省エネルギーセンター(東京)認定の省エネルギー普及指導員、新宮原充さん(63)=広島市安佐北区=に「エコライフ診断」をしてもらいました。ジュニアライター10人が記入しました。

質問項目は20。「使い切る分だけ湯を沸かしている」「冷蔵庫のドアの開閉回数を減らしている」などについて「よくできている」「できていない」など4段階で答えます。さらに、1カ月の光熱費を記入すると「診断書」ができます。

全員が、自治体の分別収集ルールを守れていた半面、テレビをつけっ放しにしている人が半数以上いました。新宮原さんは「20項目だけやればいいんじゃなく、意識し始めればいろいろやれることが見えてくるはず」と話していました。

診断は、6月5日に広島県庁前で開かれる「環境の日」イベントでも実施の予定です。また、ひのでやエコライフ研究所(京都市)のホームページでも体験できます。(高3・高田翔太郎)


 省エネナビ  30分ごとの使用量 一目

電気の使用量が表示される「省エネナビ」(撮影・中2井口雄司)

家の電気の使用量を測って記録する「省エネナビ」を、私の家に10日間ほど試験的に付けました。30分ごとに棒グラフで表示されていきます。1日に使った量も分かります。

データが目に見えるようになり、電気の使い方に敏感になりました。テレビを見ながら勉強しなくなり、暇な時は読書するようになりました。電気を使わないことで、他のことにお金が回せるとも考えるようになりました。

省エネルギー普及指導員の新宮原充さんの家では、2008年11月に省エネナビを付けたそうです。設置前は月平均1万4500円だった電気代が1万2000円に減少しました。毎日、数字を手帳に記録することで節約を意識するようになった新宮原さん。「体重計と一緒で、見ているだけで違ってきます」と笑っていました。(中3・寺西紗綾)



 ワットアワーメーター  気付かぬ待機電力 発見

家電の電力量を測る「ワットアワーメーター」(撮影・中2井口雄司)

家電で使われる電力を測る「ワットアワーメーター」という機械があります。コンセントにつなぐだけで測れます。

家電にはスイッチを入れなくても、消費される電力があります。「待機電力」といい、リモコン機能があったり、電源ランプが常についていたりする家電です。ただ、掃除機のように、待機電力があっても分かりにくい場合もあります。

パソコンを調べました。待機電力は16ワット。電源を入れると50ワットを超えました。ふたを閉めると24ワットになりました。使わない時にふたを閉めるだけで省エネになります。

消費電力量は、電力に使用時間を掛けて計算します。資源エネルギー庁によると、電力を多く使う家電はエアコンや冷蔵庫、照明、テレビだそうです。エアコンの場合、使う時間を短くするほか、設定温度を夏高く、冬低くすれば消費電力を減らせます。

ワットアワーメーターは、在庫があれば広島市地球温暖化対策地域協議会などで借りられます。(中3・木村友美)



被災後の生活は? 宮城・村田町在住 呉出身藤本さん

停電1週間  懐中電灯で食事   断水2週間  風呂入れぬ日々

呉市出身で仙台市の南西に隣接する、宮城県村田町に住むパート藤本えみ子さん(57)の家では、断水が2週間、停電が1週間続きました。停電中、懐中電灯をともして、家族4人みんなでご飯を食べていました。

停電で一番困ったのは冷蔵庫。毎日、中の物が傷んでいないか心配しながら少しずつ食べました。飲み水や食器を洗う水は、当時、高3だった次男の会社員隆宏さん(18)のアルバイト先が断水されていなかったので、毎日ペットボトルに入れて持って帰ってくれていました。とはいえ、ペットボトルの水で食器を洗ってもきれいになった気がしなかったそうです。

断水の間、風呂には入れませんでした。しかし、お風呂に入るなんてぜいたくで、入りたいなんて言えない状態でした。

毎朝、仕事に行く前「今日は水、出るかな」と蛇口をひねっていました。断水の後、初めて水が出た時には「やっと風呂に入れる」と、とてもうれしかったそうです。また、停電が終わった時には「明るいなあ」と感じました。

今回の大震災で、あらためて節約が大事だと思った藤本さん。少々電気や水が使えなくても、「昔の人はこうやって生活していたのだから、自分たちも平気だろう」という気持ちで毎日過ごしていました。その気持ちがあったからこそ、不便な生活も乗り越えられたのです。(高2・植木史織)



ジュニアライター
省エネ1カ月挑戦

ジュニアライター10人が1カ月間、自分で省エネの目標を決めて挑戦しました。

 
寝る前に照明を消す 私にとって照明は必需品で、部屋を明々と照らして寝ていました。今回、まず電気スタンドに替えました。最初は不安でしたが、オレンジの温かみのある照明で目の疲れも癒やせたように感じました。最後の週、思い切ってスタンドも消してみました。初日は1時間くらい眠れませんでした。しかし思ったより怖くなく、今ではよく眠れます。(中3・木村友美)

テレビをこまめに消す これまで家にいる間、見ていなくてもつけていたり、消さずに外出したりすることもありました。今回、少しは消すようになりましたが、つけっぱなしで朝、気付いたり、主電源を切り忘れたりしてしまいました。(中2・井口雄司)

決めた番組以外は見ない 初めのうちは毎朝、新聞のテレビ欄を見て「これを見よう」と、計画を立てて実行していました。しかし、4月半ばごろから、部屋が静か過ぎて何げなくテレビの電源を入れたり、家族と一緒に見たりしてしまいました。(高1・高橋寧々)

テレビを消して寝る つけて寝るのが習慣になっていて、落ち着かず、最初は週に1、2回はつけっぱなしでした。2週間後ごろから消すのに抵抗がなくなりました。また、つけたまま寝ないのはもちろん、寝る前は見ないようになりました。(高1・石本真里奈)

自分の部屋のコンセントを抜く 初めの頃は寝る前にすべてのコンセントを抜いていました。しかし、1週間たつと寝るのが遅くて、ついおろそかになってしまいました。
 特に、勉強机の照明のは忘れがちに。1日おきに充電する携帯電話は、充電し終わってもそのままの日が多かったです。(高3・高田翔太郎)

らす
パソコン、携帯ゲーム控える 携帯ゲーム機を買ったばかりで、最初は我慢するのがつらかったです。しかし、ジュニアライターみんなで取り組んでいる、と考え、乗り切れました。さらに学校が始まると勉強時間が長い分、遊ぶ時間が少なくなり、2時間以内の目標は達成できました。(中3・寺西紗綾)

テレビは1日1時間にし、電力をかけない使い方を 音量や明るさは違和感なくすぐに抑えられました。見る時間は1時間を意識し、見たい番組だけにしました。一番難しかったのは「主電源を切る」です。初めはリモコンで切っていました。終盤はできるようになりました。
 ただ、テレビを見なくなった代わりにパソコンを使う時間が増えました。(中3・来山祥子)

携帯電話の充電やパソコンの使用量を減らす 携帯電話の充電もパソコンの使用も毎日欠かさずやっていました。それを、携帯電話はバッテリーがぎりぎりになってから充電。パソコンは週3回30分だけにしても、全く不便を感じませんでした。(高2・植木史織)

く寝る
週3日、早寝早起きする 時間の使い方を変えるのが難しく、達成したのは12日中8日。就寝時間を決めたので、だらだらテレビを見るのが減りました。朝はテレビをあまり見ず、明かりをともす必要もなく、自然に省エネできました。(中3・石井大智)

午後11時半までに寝る 1カ月間で4日しか目標を達成できませんでした。学校の予習や復習、宿題がなかなか終わらなかったからです。特に、リビングで勉強している間、ほぼ常にテレビがついていて、見てしまいました。また、何もせず考え事をしていて時間が過ぎた日も多くありました。(高2・野中蓮)