主要8カ国(G8)の下院議長たちが9月、広島市に集まり「平和と軍縮」について会議をします。このうち4カ国は核兵器を持っている国です。人類史上初めて原子爆弾の被害を受けた原点の地で、核兵器廃絶の新たな動きが生まれるでしょうか。このG8議長サミットは広島や日本にとって、平和の願いを世界へ伝える絶好の機会と言えます。
ジュニアライターはこの会議の広島開催を提案した河野洋平・衆議院議長(71)に、東京の議長公邸でインタビューしました。議長サミットに込める思いなどを聞き、子どもたちへのメッセージをもらいました。一人一人、何ができるかを考えてみませんか。
子どもと議長サミット | −「平和について同世代で考えて」 |
「各国の議長に強い印象を受けて帰ってもらいたい」と話す河野議長(撮影・高1室優志) |
―議長サミットを機会に子どもに何を学び、どのようなことを感じてほしいですか。
広島が世界の平和を考える上で、非常に重要な場所だということを知ってほしい。ここで8カ国の議長が、それぞれの国で平和や核軍縮についてどんな議論をしてきたかを話すんだから。
被爆を実際に経験し「こんなことは二度とあってはいけない」と叫んでいた人が60年以上たって少なくなっている。若い君たちにはその声を聞いて次に伝えていってほしいと思う。会議を広島で開くことが、「(自分たちには)大事な役割があるんだ」と思い直すきっかけになることを期待している。
今人間が考えるべき大きな問題は2つある。1つは環境問題。もう1つは平和だ。環境については総理大臣たちが集まって洞爺湖サミットでするので議長会議では平和をやろうと考えた。
1回話をすれば片づくほど簡単なテーマではない。(平和が大事だと)ずっと言い続けなければいけない。そして何かを考えるときには常に「そのことが平和のためにプラスになるのかどうか」と問い直すような、根本の問題なんだということも理解してほしい。
―子どもたちにどのようにかかわってほしいと期待されますか。
開催までまだ日があるが、ずっと関心を持ち続けてほしい。そして国内外を問わず、同世代の間で「どうすれば平和が維持できるか」「戦争をなくすことができるか」を考えようと呼び掛け合ってくれるといい。
戦争くらい環境を破壊するものはないよね。そして平和な世界になると、戦争に使うお金が必要なくなる。すると、どれだけ環境問題やお年寄り、子どもたちのために使うことができるか。そう考えることも大事だ。
平和のためにできること | −「子どもサミット いいアイデアだ」 |
議長サミットへの意気込みを取材するジュニアライター(撮影・高1室優志) |
―広島の子どもに求めることは。
広島の人は平和記念公園などが身近にあり、原爆投下という悲惨な出来事をほかの人たちよりも深く知ることができる場所にいる。(原爆について)知っているとは思うが、もっとよく知ってもらいたい。感受性が強い年代だから「そんなことがあったのか」「二度とあってはいけない」と新鮮な気持ちで受け止めてほしい。
―私たちは子どもサミットを開いてはどうかと考えています。
良いアイデアだ。国連などでは子どもが平和について考えたりしているが、広島のように実際にこの場所でこんなことが起きたんだと直接見たり聞いたりできる場所で、外国から来た同世代と話をすると、分かりやすく説明もできる。実現すればとてもいいと思う。
―戦争についてどう考えますか。
戦争に一方的な被害者っていうものはない。けんかだってそういうもの。両方とも被害者で加害者で。だから第二次世界大戦も「われわれにも問題がありました。日米お互いにやったりやられたりしたんです。そして最後にわれわれはやられました」という気持ちがないと。もちろん使ってはいけない核兵器を使ったことは許せない。ただ全体をみると、戦争という行為が良くないと考えた方がいい。サミットにはアメリカの人も来る。その人にそっちが悪いと言っていたのでは話が進まない。
―議長はどういうきっかけで平和や軍縮問題に興味を持ったのですか。
戦争を経験しているから。爆撃を受け、近くに爆弾が落ちたこともある。「こういうことがあってはだめだ」という気持ちが強い。ただ戦後60年以上がたち、戦争を知らない最近の人たちは実体験がある世代に比べて平和に対する気持ちが弱まっているのではと心配している。
広島からの発信 | −「被爆者と話す機会設けたい」 |
―参加国の議長たちに広島で何をつかんで帰ってほしいですか。
議長たちには、原爆資料館や原爆ドームなどを見てもらうつもり。どういうやり方になるかはまだ決まっていないが直接、被爆者と話をする機会も持ちたいと思っている。
昨年9月にベルリンであった議長サミットで「日本では平和の問題について議論したい。そしてそのテーマなら広島で開きたい」と提案した。全員が賛成してくれた。「それはいいことだ」と。各議長はベテランの政治家。広島で見て話を聞けば、相当な強い印象を受けて帰ることになる。それぞれの国会で話もしてくれるだろう。できるだけ議長の国の言葉で書かれた資料をお土産として渡し、読んでもらえればいいと思う。
―広島の役割は何だと思われますか。
広島は直接、原爆の犠牲になった街として、60年以上、その事実をよく伝えてきた。やられたやられたと言い過ぎると共感が薄れるのではないかと思うが、今は広島も長崎も上手に世界に訴えていると思っている。
河野議長へのインタビュー |
インタビューは高2・串岡理紗、中3・松田竜大、中1・坂田弥優が担当しました。
議長サミットとは
米国、カナダ、フランス、英国、ドイツ、イタリア、ロシア、日本の8カ国の立法府議長と欧州議会議長が集まり、議会のあり方や国会の方向性、世界的な問題について話し合う会議です。首相や大統領などが集まる主要国首脳会議(サミット)の開催国で毎年開かれます。議長サミットは共同宣言などをまとめず、会議も非公開が慣例になっています。
議長サミットの歴史
首相たちのサミットが1975年に始まったのに対し、議長サミットは2002年にカナダで初めて開かれました。毎年9月に持ち回りで開催しています。日本では初開催です。
「議会における委員会の活性化」(02年、カナダ)「議会の監視能力」(03年、フランス)など議会運営に関することを主に議論していましたが、近年は環境問題(07年、ドイツ)なども話し合われています。
今年のテーマと日程
北海道・洞爺湖町で7月に開かれるG8サミットは環境について話し合います。
広島市での第7回議長サミットのテーマは「平和と軍縮」です。昨年の議長サミットで河野衆議院議長が提案し、実現しました。9月2日に中区の国際会議場で開かれます。 そのほか、6月には京都で外務大臣が、大阪では財務大臣が集まるなど、サミットに関連した会合も予定されています。 |
議長サミットのテーマ
この項は中3・岩田皆子、中2・高木萌子が担当しました |