第19号に続き、環境問題を考えます。テーマは「大気」です。この問題は、私たちが吸う空気が汚れているというだけではありません。
二酸化炭素などが増えると地球の熱が宇宙に放出されにくくなり、気温が上がります。地球温暖化です。「暑い」というだけでなく、生態系に狂いが出たり、北極などの氷が解けて海水面が上がるなどの影響が出ます。
地球の平均気温は100年で0.74度上がりました。来年からは、京都市で1997年にあった国際会議で決まった、温室効果ガスの排出量を減らす約束(京都議定書)の実行期間になります。大きな規模の話に見えますが、一人一人が気をつけることが力になります。
専門家に話を聞きました。多量の二酸化炭素を排出する発電の量を減らすためには「テレビやエアコンをつけっぱなしにしない」。燃やしてしまうごみを減らすためには「食材を使い切る」。なんだかできそうですね。
大気問題 4つに大別 −国立環境研究所・村野専門員に聞く
大気の問題について、国立環境研究所(茨城県)前大気化学研究室長の村野健太郎環境科学専門員(60)は「地球温暖化」「大気汚染」「酸性雨」「オゾン層の破壊」の4つを挙げました。
「地球温暖化」は、二酸化炭素など温室効果ガスが増えることで進みます。平均気温が上がると、南極などの氷が解けて海水面が上昇し、高潮が起きやすくなるほか、水没するおそれのある国があります。
また、海水温も上がり、蒸発する水蒸気が増えるので、ハリケーンや台風が大型化すると指摘されています。
「大気汚染」と「酸性雨」は工業の発達により、空中に有毒な硫黄酸化物や窒素酸化物が排出されたことが主な原因です。太陽の紫外線に反応すると、目やのどを傷める光化学オキシダントとなります。また硫酸や硝酸に変化し、雨に溶けると酸性雨になります。欧州では河川の酸性化が進み魚が死んだり、大気汚染も絡んで木が枯れたりする被害も報告されています。
日本の土壌は酸性を中和する力が強く、はっきりとした問題は表れていませんが、欧州並みの酸性雨が降っており、「いつ被害が一気に出てもおかしくない」そうです。
「オゾン層の破壊」は、紫外線を吸収する働きが弱くなるので、皮膚がんや白内障になる可能性が高くなるといわれます。原因となるフロンガスは現在、規制が進んでいますが、南極上空のオゾンホールがなくなるには、50年以上はかかるといわれています。
大気汚染の対策として、石油などの使用を減らすことや、工場の廃ガスに含まれる有害物質を取り除く装置の取り付けが考えられるそうです。(中2・坂田悠綺)
海外での取り組み
スペイン | 太陽熱使う調理器具 | ドイツ | 再利用システム浸透 |
---|
ソーラークッカーで調理するイウリア・サラリア中学校の生徒 |
スペイン・マドリードのイザック・アルベニズ中学校は3年前から、ごみについての意識を高める活動をしています。 家庭でごみをどう分別しているかのインタビューをしたり、リサイクルの様子を見学したりしました。エスター・マーティンさん(15)は「ごみを床に捨てていたみんなの意識が変わった」と成果を話しています。 やはりスペインのアンダルシア地方にあるイウリア・サラリア中学校では、太陽熱で料理をする「ソーラークッカー」を生徒が作りました。150―200度になるので、何でも調理できるそうです。またバルセロナでは、車の排ガスを減らすため、市民を対象に会員制の自転車利用サービスを始めました。専用の駐輪場から目的地近くの駐輪場まで乗って、30分以内で返す仕組みです。3000台に対して8万人が申し込むほどの人気です。 ドイツでは、ペットボトルやビンを繰り返し使うリターナブルが浸透しています。使った容器は販売店に持っていくと、飲料メーカーが洗って再利用します。 スーパーのレジ袋は有料で、買い物客は自分のバッグを持って行きます。包装も少なく、冷凍食品がそのまま箱に入っていることもあるそうです。袋の原料である石油の使用を減らせます。 また飲み物の自動販売機がほとんどありません。職場や学校へは自分で水筒やペットボトルを持っていくそうです。(中2・岩田皆子、中1・大友葵) |
スーパーで売られているリターナブルのペットボトルの飲料水 |
水素自動車 −水蒸気だけを排出
ガソリンを使わない車が注目されています。水素ロータリーエンジン(RE)を積んだRX―8を公用車にしている広島県を取材しました。 この車はマツダが2006年に実用化しました。水素タンク(110リットル)を載せ、100キロ走れます。排出するのは水蒸気だけという環境に優しい車です。 市販はしていませんが、マツダは全国8カ所に8台をリースしています。広島県は業務で使うほか、環境イベントなどでも展示し、意識を高めるために活用しています。県環境政策室の有馬博之さんは「たくさん質問が出て、関心の高さを感じる」そうです。 私たちも乗ってみました。ガソリン車よりエンジンの回転数が多いため、音が少し大きいと感じましたが、それ以外は同じだと感じました。 ほかに水素を使う車として、酸素と反応させたときにできる電気で走る燃料電池車などがあります。トヨタ、ホンダがリースしています。 夢のような話ですが、2025年に日本がどうなっているかを考えた政府の中間報告では、太陽エネルギーと二酸化炭素で光合成する植物のような車の研究も出てきます。(高2・岡田莉佳子)
|
回収機に空き缶を入れると10円が戻ってきます(撮影・中1高木萌子) |
鈴峯女子中・高 −リサイクルや省エネに力
私が通う鈴峯女子中・高(広島市西区)は1995年度から環境教育を始め、ごみの減量や省エネなどを学校全体で実践しています。今年6月には広島県の「ひろしま環境賞」を受賞しました。
ごみは、校内のリサイクル場で毎日14種類に分けます。学校で買ったジュースの缶とペットボトル、紙コップの回収機もあり、入れると10円が戻ります。紙コップは業者がトイレットペーパーにし、1年に学校で使う6割(約1万個)に生まれ変わっています。
電気の使用量が分かるモニターも4台あり、前月や前日から、どれだけ増えたり減ったりしたかが分かります。こまめに電気や、ガスを使うエアコンを消して、2002年度から3年で電気7%、ガスは27%を減らすことができました。
この取り組みは、環境教育の授業を受けた生徒が「分別したいけれど、教室にはごみ箱が一つしかない」と指摘したことがきっかけで99年度から始まりました。さらに細かい分別を始めた2004年度は、リサイクルに回す量が増え、捨てるごみは前年度から8割も減りました。(中1・高木萌子)
鈴峯女子中・高校の取材風景です |
エコクッキング −生ごみ・ガス 減らす工夫
私たちにもすぐにできる環境対策の一つとして、生ごみの量や使うガスを減らす「エコクッキング」に注目しました。ポイントを広島県栄養士会事業委員長の山崎初枝さんに教えてもらいました。
生ごみを出さないコツは「食材を使い切ること」です。一つの材料で複数のメニューを考えると、飽きずに食べられます。メニューを考えると、まず材料の在庫を確認するようにすれば、いらないものを買わずにすみます。環境にも財布にも優しいと言えます。
火加減も大事です。鍋の縁からはみ出すほどの火力はむだです。火を使わない酢の物やサラダを組み合わせると、栄養バランスも良くなります。(中2・松田竜大)
二酸化炭素封入研究 −地中に閉じ込め温暖化防止
製鉄所や発電所から出た二酸化炭素を地中に封じ込める研究が進んでいます。新潟県長岡市では2003年から1年半で気体1万トンを埋める試験をしました。カナダなどでは既に年100万トン単位で本格実施しています。 地下1100メートルにある水と砂が混ざった「帯水層」に圧力をかけて注入しました。長岡市のように天然ガスが採れる地層は、帯水層と水を通さない泥の地層が重なり、ガスが抜けにくいのです。 理論上は世界の年間総排出量の約80年分約2兆トンを地球上に封じ込められるそうです。ただ試験では1トンあたりの費用が26万円もかかったのが課題です。プロジェクトを担当する地球環境産業技術研究機構(京都府)研究員の三戸彩絵子さん(34)は「将来的には2、3000円にする技術を開発したい」と目標を話しています。(小6・小坂しおり) |