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平和を訴えるミュージカルのリハーサルの合間にボーンフリーの子どもたちと。奥の右から2人目が筆者(2011年1月) |
なかやま・みおい
1977年広島市東区生まれ。立教大卒業後、NPO法人国際子ども権利センター(東京)勤務を経て、2002年にインドに渡った。写真で児童労働問題を訴えるプロジェクトを展開した後、05年のボーンフリーアートスクール設立に協力。主に子どもたちへのダンストレーニングを担当しており、10年から同スクールの共同代表。インド・バンガロール市在住。
児童労働問題に関心を持って2002年にインド・バンガロールに渡った私はある日、働く子どもたちのアート展の新聞記事を見つけ、行ってみました。そこでジョン・デバラジ(55)という、彫刻や絵画などを手掛ける男性アーティストに偶然に出会ったのです。
働く子どもの写真を撮りたいと思っていた私は、ジョンが考えていた、子どもたちにカメラを教え、子どもたち自身が児童労働の写真を撮る、という子ども主体のプロジェクトに、すぐに賛同しました。しかし、働いたり路上で物乞いしたりする子どもを見ては感情的になる私。「泣いていては何も変わらない。彼らが置かれている状況に怒りを感じ、怒りを社会を変える源にするべきだ」とのジョンの言葉に納得し、それ以来写真が撮れるようになりました。
私が共同代表を務めるボーンフリーアートスクール(ボーンフリー)は、ジョンの経験や夢を具現化したものです。働く子どもや路上にいる子どもたちに、アートを通して新たな人生の道を示す場所です。05年の開設時から携わっている私は、子どもたちの視点を通して、身分制カーストの最下層ダリットや女性、子どもたちの虐げられている状況も学びました。
ボーンフリーの活動の核は「平和」です。インドは1人当たりの軍事費が教育費の300倍あります。80以上の核弾頭を持ち、パキスタンといがみ合う中、大多数が核兵器保有を支持しています。広島、長崎の原爆投下については、多くのインド人が知っていますが、その真実やいまだに苦しむ被爆者の現実は知られていません。
ボーンフリーの子どもたちは、ヒロシマ・ナガサキを描いた原爆劇「白い花」をインド全国で演じ、軍事費を減らし教育費を増やすことで、子どもたちを労働から解放するよう訴えています。
ジョンの取り組みを間近で見て私も最近、子どもたちの人生に直接影響影響をもたらす働きがしたいと感じています。中でも、昔から好きだったダンスを通して子どもたちの心と体が解放され、自信を持つ手助けをしたいと考えています。今後は、プロのダンスセラピストとして活動することが夢であり目標です。