「竹馬のあの子」   その1 みんなにがてだから…

 たかしが自転車(じてんしゃ)をこいでいると、「おす」と、うしろで声(こえ)がしました。

 ふりむくと、よしろうくんでした。そばにしょうたくんもいます。ふたりとも自転車にのっています。 イラスト

 「おす」と、たかしもへんじしました。

「また女(おんな)の子(こ)と遊(あそ)んでたのか」と、よしろうくんはいって、ふひっとわらいました。

 たかしはだまっていました。さっきまで、たしかにまりちゃんとあそんでいたのです。

「いっしょにスポーツ公園(こうえん)にいこうよ」

 しょうたくんは自転車のハンドルをぐりっとうごかしながら、そうさそいました。

 たかしはうつむいて、だまったまま頭(あたま)をふりました。スポーツ公園には、丸太(まるた)をわたったり、ぐらぐらゆれるつり橋(はし)をわたったり、ロープにぶらさがってジャンプしたりする、むずかしいあそび道具(どうぐ)がいくつもあるのです。たかしはそういうのは、みんなにがてでした。たかしは自転車だって、まだほじょ輪(りん)なしではのれないのです。よしろうくんもしょうたくんも、もうほじょ輪なしで自転車にのっています。

「じゃあな。たかしは女の子と遊んでろ」

 よしろうくんがそういうと、ふたりは自転車でさあっといってしまいました。

 くやしいようなさみしいような気持(きも)ちで家(いえ)に帰(かえ)ると、まっていたようにお母(かあ)さんが「おばあちゃんにパンをとどけてちょうだい」と、たかしにいいました。それからつづけて、「かぜのおぐあい、いかがですかってたずねてね」と、いいました。

 おばあちゃんは、坂(さか)の下(した)の家で、たみこおばさんとふたりでくらしています。たみこおばさんがお仕事(しごと)にいっているひるま、おばあちゃんはひとりで家にいるのです。かぜをひいているいまは、きっとひとりでベッドでねているはずです。

 たかしはパンの包(つつ)みをうけとると、自転車でおばあちゃんの家にむかいました。

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