中国新聞

夜 あ け

作・中澤晶子 絵・ささめやゆき


 きていると、いろんなこえる。ぼくがってさえいなければ、きっとこえた、かあさんがさいごのをほそくって、いってしまった


「ほんとうに、ひとじゅう、きているつもりか」

 とうさんは、あきれたでぼくをる。

 あのみたいにったりしなければ。もしかして、ってうから。ぼくは、とじかけたを、いっぱいにあけた。

 とうさんがつくったさなレンガの暖炉から、ぱちぱちはぜる。まっかになったが、がさりとくずれると、がぱっといあがり、とうさんの横顔くひかる。 イラスト

 月夜だ。どこかでにつもったが、こらえきれずにおちていく。

 かあさんがいなくなって、めての、ふたりだけの山小屋。いまにもくずれそうな、がたぴしの小屋だけど。をすますと、とうさん、かあさんとすごした季節や、だらけのや、かきばっかりしてた大雪こえてくる。

「ああ、のにおい!」

 かあさんは、りて小屋つと、いつだってった。でっかいの、元気だったかあさん。なのに。

 つめたい空気いたい。ぼくは、毛布をはねのけてちあがった。

「どうした?」「に」「いぞ」

 とうさんは、だまってついてきた。

 はでなをたてて、ドアがあく。かあさんがぬったペンキが、ひとひら、おちる。

 つんとった空気がいたい。

 いちめんのは、のひかりにらされて、く、かがやいていた。

「とうさん、あそこ、ほら」「どこ?」

「ほら、やぶのいりぐち。あしあと」

「ああ」「うさぎだよ、きっと」

「そうかな」

「…かあさん、うさぎだった。だから、うさぎ」「そんな」

 とうさんがった。

 かあさんがいってしまっても、ちっともかなかったとうさん。

「そうか、うさぎだったか」

 とうさんは、いていってしゃがみこみ、のあしあとをそっとなでた。


 ぼくは、とうさんとならんでく。

 あれ? ほら。

 こえるよ、だれかがいっしょにいてる。ぼくには、わかる。とうさんも、きっと。ぼくたちは、だまってく。あしもとで、サクサク、る。

「……さてと」

 とうさんが、きくをついてちどまる。

「もどって、朝飯のしたくをしよう」

 とうさんは、ぼくのをぎゅっといた。ぶあついのフライパンでつくる目玉焼き。いいにおいのベーコン。かあさんがにつくったいちごのジャム。そうだね。ぼくは、うなずく。

 もう、だれもいてはいない。とうさんとぼくのふたりだけ。む、ふたつのあし

 もうすぐ、ひがしの初日がのぼる。


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