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  その1 ちいさいかえるのうた
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 あかるいつきよです。
  きつねのこんこが、どんどんいけのほとりをさんぽしていると、いけのなかから、だれかが、こんこをよびました。
  「こるこるこる、こんばんわ」
  いけのなかほどのすいれんのはっぱのうえに、ちいさいあおいかえるがいっぴき、ちんとすわっているのがみえます。
  「こんこん、こんばんわ」
  こんこが、こえをかけると、ちいさいあおいかえるは、はずかしそうに、「ぼくいま、できたてのうたをうたっていたんです」といいました。
  「うた?」
  「おつきさまが、まんまるでしょう。だからもうすぐ、あかちゃんがうまれるんですよ」
  「あかちゃん?」
  「おつきさまのあかちゃんです。ほらもう、あんなにまんまるだから、きっと、あしたのばんあたり、うまれますよ」
  そういわれて、こんこは、あたまのうえの、しろくあかるいつきをみあげました。
  「へええ」
  こんこは、しりませんでした。
  おつきさまのあかちゃんが、うまれるだなんて。
  「だから、ぼく、たったいま、うたを、つくったんです。おつきさまのあかちゃんに、うたってあげようとおもって」
  かえるは、うれしそうにいいました。
  「ききたいな、ききたいな」
  こんこが、てをぱちぱちさせると、かえるは、もじもじしていましたが、「じゃあ、ね」といって、すいれんのはっぱのうえに、きれいにすわりなおして、うたいはじめました。
  かるかるかる、こんばんわ…
  こるこるこる、こんばんわ…
  かれれれれれ、こんばんわ…
  これれれれれ、こんばんわ…
  こんこは、おつきさまを、ましょうめんにみあげたまま、きいていました。
  いいな、いいな。
  あしたのばん、おつきさまのあかちゃんがうまれるんだ。
  まるい、ちいさい、おつきさまのあかちゃん。かわいいだろうな。そうぞうする、こんこのこころも、まんまるなおつきさまのように、あかるいのでした。
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