中国新聞

「どんぐり横丁へゴー!」

  その5 さよなら どんぐり


イラスト

 どんぐり横丁は、さびれた商店街だ。

 どんぐり横丁には、むかしのものがたくさんのこっている。むかしのものこっている。それが、どきのぼくたちどもには、ひどくしんせんだった。

 そんなどんぐり横丁が、とりこわされるとしったのは、あるがたのことだった。

 どんぐり横丁をとりこわして、駅前いったいに、きなおをつくるのだというニュースにづいたのは、さんだった。

 「ここをとりこわして、ショッピングモールをつくることが正式にきまったそうですが、どんなおもちですか?」

 おどろいたぼくとさんが、画画いっていると、つぎのしゅんかん画面にうつったのは、なんとおたふくのおばあちゃんだった。

 あいかわらず、満面のえみをたたえたおばあちゃんは、ゆっくりとった。

 「時代のながれじゃけえ、しかたがないですわ。でも、このところ、どもがぎょうさん、いものにきてくれるようになっとったんですわ。さいごの、さいごに、ええをみさせてもらいました。ほんま、ありがとうさん」

 画面のおばあちゃんのひとみから、なみだがポロンとながれた。えがおのまま、おばあちゃんはないていた。

 「ほんま、ありがとうさん」

 おばあちゃんのことばが、ジーンとむねのにこだました。

 ぼくたちが、どんぐり横丁のとりこわしにはんたいしたことは、いうまでもない。けれど、どうすることもできなかった。

 こわされていくどんぐり横丁をじいっとつめながら、どんぐり横丁たちは、おわかれにきたぼくたちにこうった。

 「みんながはんたいしてくれたけえ、ほんまにうれしかった。はんたいしてくれるがおるうちにやめるんが、ばんじゃ」

 どんぐり横丁は、もう、ない。

おわり

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