5 そうじきロケット
「燃料は十分あります」
「燃料って?」
「そうじきのロケットの燃料ですよ。ほこりに決まってるでしょ。ここはほこりの宝庫ですからね。さあ、出発!」
ぼくらを乗せたロケットは道にも迷わず、まるで吸い寄せられるように、暖かな光に包まれた小さな星に着いた。
「カタヅケラレナイ星だ!」
おもちゃたちは歓声をあげた。
「ひろし君ありがとう。私たちは、この星で自分らしく生き生きと暮らします」
おもちゃたちがお礼を言っていると、急に、ファミコンのナビゲーターが鳴りだした。
「大変だ。かたづけひろしはおかあさんをおそって、片付けてしまった!」
かあさんが片付けられた!
ぼくは泣きそうになった。
「ひろし君、落ち着いて。かたづけひろしがこわがっていた物、何だったか思い出して」
四角い男の人はぼくの目を見つめて言った。
「ええっと…ああ、そうじきだ。…あれっ!」
「そう。だから早く、このそうじきのロケットに乗って帰りなさい」
ぼくはロケットに飛び乗った。すると、ぼくの後から、一枚の絵が、追いかけるように舞いこんできた。クレヨンで描いた絵。赤いそうじきのロケットに、四角なロボットが乗っている。
(ほしようちえん、よしだひろし)ぼくの絵だ。思い出した。このそうじきのロケットはぼくがつくったロケットだったんだ。
ロケットが噴射を始めた。
ぼくはあわてた。
「せっかく会えたのに…また会える?」
「会えますよ。ひろし君の心の中でね」
四角なロボットはほほえんだ。
そうじきロケットは飛び立った。ビュンビュンと家をめざす。「かあさーん、かたづけひろしはほこりだぞ。すぐに、そうじきロケットで吸いこんでやるからな!」
おわり
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