3 だっしゅつさくせん
押し入れの中は真っ暗で、上から怪獣がおおいかぶさって息苦しい。おまけに怪獣のぎざぎざが、ぼくの鼻の穴をくすぐる。
ハッハッハックション
大きなくしゃみが出た。そのとたん、押し入れの中がぼーっと明るくなり、おもちゃ箱のおもちゃたちがごそごそ動きだした。
「こんな狭苦しいところは、もういやだなあ」
口々にそう言うと、おもちゃ箱から飛び出ていった。ウルトラマンはシュワッチと言って飛び出した。怪獣は箱から出るとガオーッと大きなあくびをした。合体ロボットはキコキコと体操を始めた。
「合体していると、つぎめが痛くなるんだよ。おおい、ひろし君もでておいでよ」
ぼくも、おもちゃ箱をよじのぼって外に出た。ぼくの後からも、人形やレゴ、乗り物、トランプ、ゲームなどのおもちゃが次から次へと飛び出してきた。よくもまあ、こんなにたくさんのおもちゃが入っていたもんだ。みるみるうちに、押し入れの中は、満員のエレベーターのようにギュウギュウずめになった。おもちゃたちは、ぎゃあぎゃあと叫びながら押し合いへしあいする。ぼくも押されて、そうじきの上に押し上げられてしまった。
と、そのとたん、パーンとクラッカーがなって、おもちゃたちは静かになった。おもちゃたちをかきわけるようにして、男の人が出てきた。顔も四角、体も四角。どこもかしこも四角いその人は、顔をしわだらけにして笑いながら言った。
「みなさん。喜んでください。私たちのキャプテンがきてくれました」
「ありがたい。うれしいね」
おもちゃたちは、いっせいに拍手した。
ぼくは驚いた。
「キャプテン? ぼくがかい」
「そうですとも。待っていたのです」
男の人は大きくうなずいて話し始めた。
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