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「いいお産 考」

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 第1部 産む人たちの思い

− 分娩台使わず安産を −
「お産の家 明日香医院」の大野院長

 東京都杉並区の「お産の家 明日香医院」の院長として「自然なお産」を実践している大野明子さん(49)が十四日、広島市助産師会の研修会で中区で講演した。講演のテーマは、著書の題名でもある「分娩(ぶんべん)台よ、さようなら」。分娩台を使わず、医療介入をできるだけ控えた同医院の取り組みを報告した講演の要旨をまとめた。(平井敦子)

医療介入の抑制に努力


  難産回避へ日々の運動

Photo
「お産の仕事は愛情を注ぐ仕事」と話す大野さん

 自然に産みたい、というのは女性の本能。妊婦さんの表情を見ても、それが幸せと感じる。私自身、分娩台で子どもを産んで「これじゃない」と感じ、産科医師を志した。

 一九九九年六月、小さな木造家屋で開院。手術室、分娩台はなく、私と助産師六人がお産を介助している。昨年末までの分娩数は千四百二十七件。転院・搬送は五十二件で、全体の3・6%。うち帝王切開は二十九件で、2・0%。現代の一般的な帝王切開率は10―30%程度で、結果の違いは、そこに至るプロセスの違いでもある。

食事は和食中心

 帝王切開の三大原因は、難産と、骨盤位(逆子)、前回の帝王切開。経膣(けいちつ)分娩のためには、その原因を減らせばいいと考えている。

 まず難産を減らすため、妊婦の生活を自然に戻す。初産婦で一日三時間の散歩や、一日八十回のスクワットをしてもらう。早寝早起き、食べ物を和食中心にすることを日々の外来で丁寧に指導する。骨盤位は、標準より早い妊娠二十八週以降から、妊婦のおなかの上から赤ちゃんを回す外回転術によって直している。

 お産の時は、助産師がずっと付き添って、妊婦を支える。ほとんど内診はしないが、分娩の進行は把握できるし、会陰切開もこれまでに五例にとどまる。

あおむけ不向き

 あおむけのお産は重力に逆らった姿勢。大動脈、大静脈も圧迫される。お産のとき、自らあおむけになって産む人はいない。明日香医院では多くの人が、四つんばいや側臥位(そくがい)(横たわった姿勢)で産んでいる。

 医師一人のお産を危ないとする意見もあるが、あらかじめスクリーニングの上で丁寧に経過を見ていれば、医師一人だから危険ということはない。むしろ「安全」のみが声高に叫ばれ、予防のための医療介入が進むことの方に、危惧(きぐ)を覚える。

 私がもらって一番うれしい言葉は「また産みたい」。自分の努力と丁寧さで安産をつむぐのだと、日々のお産に向き合っている。

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おおの・あきこ 1985年、東京大大学院博士課程修了、理学博士。93年愛知医科大医学部卒。日本赤十字医療センター、愛育病院などを経て、97年に自宅出産専門の「九段お産相談室」を開設。99年から「お産の家 明日香医院」院長。

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2007.1.22