中国新聞


「社内で保育」じわり浸透
子育て世代の人材確保へ


   

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広島市中央卸売市場の建物内にある保育施設(広島市西区)

■中小連携し施設設置も

 社員の子どもを預かる保育施設を設ける動きが、中国地方の企業で目立っている。認可保育所に入所できない待機児童が増える中、社員が働きやすい環境を整え、優秀な人材の確保につなげたい企業の狙いがある。規模の小さい企業には保育施設運営の負担は重く、中小企業が連携する取り組みも生まれている。(三浦充博)  お好みソースなど製造のオタフクソース(広島市西区)が設置した社員向け保育施設。社員の子どもを認可保育所と同等の保育料で預かる。通常は午前7時15分〜午後6時で、午後7時まで延長が可能。現在は1、2歳児の4人がおり、来月には6人に増える。

▽国から助成金

 「保育所を探す手間が省け、スムーズに復職できる」。来月から1歳5カ月の長女を預け職場復帰する立沢美代子さん(30)は喜ぶ。

 同社は2009年10月、本社近くの社宅跡地に保育施設を建設。運営は専門業者に委託し、保育士2人、栄養士1人が未就学児を預かる。保育施設の設置費、運営費とも国から3分の2の助成金を受けているが、自社の負担は軽くないという。佐々木雅次総務部長は「子育てのため、育てた社員が会社を辞めては会社のためにならない。人材確保にはコストがかかる」と話す。

 企業が独自に保育施設を設ける背景には、待機児童の多さがある。広島市によると、保護者が希望する市内の認可保育所に入所できない子どもの人数は4月1日現在で633人に上る。

 オタフクソースから保育施設の運営を受託しているアイグラン(中区)には地場企業から、保育施設設置の問い合わせが月に数件ある。重道泰造社長は「子どもを生んだ後も仕事を続けたい女性は年々増えている。保育施設は、就職先を考える新卒にとっても魅力の一つ」と強調する。

▽コスト面課題

 一方で企業による社員向けの保育施設には廃止や休止もある。中国地方全体の保育施設は昨年3月末現在で96カ所で、ここ数年は横ばい状態。倉敷市では施設数は減少傾向で、市保育課は「想定より利用者が少なかったりコストがかかったりして、企業が運営を断念したのでは」とみる。

 コスト面の問題を、中小企業は連携して乗り切ろうとしている。広島市中央卸売市場(西区)内の卸会社などは昨年1月、市場内で働く子育て世代の社員の定着を目的に民間保育所を誘致した。全国の中央卸売市場で初となる市場内保育所「もみのき保育園」で、市場内で働く社員の子ども5人を預かる。近くの住民の子どもも受け入れている。

 西区商工センターの卸業者でつくる協同組合広島総合卸センター(231社)も9月、商工センター内に共同の保育施設を開く。卸センターの保本正義専務理事は「労働人口が減る時代。社員に安心して仕事を続けてもらうため、連携して保育施設の運営に取り組む必要性が高まる」と強調する。

(2011.6.24)


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