中国新聞


採用活動の開始時期
長い就活 抜本見直しを


 【社説】大学の3、4学年は本来、専門分野をじっくり学べる時期だ。実際は就職活動に振り回され、学業に専念するのが難しいという。

 長期化する就活の見直しへ、日本経団連がやっと腰を上げた。会社説明会の開始を2カ月間遅らせて3年の12月以降と決めた。採用に関する倫理憲章を改正し、2013年春の入社組から適用する。

 面接などの選考活動は4年の4月からで、現行と変わらない。3年の夏ごろから行われるインターンシップは、採用活動とは無関係であることを徹底して認める方向という。今は実質的な新卒者の囲い込みとなっているケースもあり、どこまで守られるかの保証はない。

 これでは、3年から就活という実態は大きくは変わらないだろう。一歩前進との評価もあろうが、まだ不十分と言わざるを得ない。

 一方、商社でつくる日本貿易会は会社説明会を3年の2、3月以降、選考活動は4年の8月以降にすべきと提言した。このぐらいの是正でないと抜本見直しとは言えまい。

 なぜ小幅の見直しか。経団連は、4年の夏ごろに理系学生の研究活動がピークを迎えることと、大企業に遅れて始まる中小企業の採用に時間が取れるよう配慮したという。

 夏の採用試験が一般的だったころもある。デメリットを最小限にするよう知恵を絞り、対策を講じればなんとか乗り切れるのではないか。

 就職情報サイトなどを見て多数の企業に応募する就活が今は一般的だ。その期間が短くなれば、企業を知る機会が減るという不安も学生側にはあるだろう。就活が自己分析を促し、社会勉強の場になっている面も否定できまい。

 しかし、就活の長期化の弊害が目に余るのも事実だ。大学側からは「教育が空洞化し、海外留学やゼミ指導など多様な教育の展開も難しい」との声が上がる。大学でキャリア教育を拡充しながら、就活期間を短縮していくべきだろう。

 多様で柔軟な採用のあり方も考えたい。例えば、卒業して3年以内は新卒者並みに扱う方式だ。就職先が未定の卒業者だけでなく、卒業まで学業に打ち込みたい学生の受け皿にもなる。

 経団連の憲章に罰則はない上、外資系など会員外の企業は縛られない。実効性のある是正に向け、かつてのように国が関与する就職協定も検討の余地があるのではないか。

(2011.1.16)

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