地域の見守り 再発防止、手探り続く 児童の意識づけも課題
呉市で下校中の広小1年女児が市営バスにはねられ死傷した事故から8日で丸1年となった。入学3日目の新入生が犠牲になった痛ましい事故。学校や保護者、市交通局などの関係者は再発防止の対策を重ねてきたが、不安解消は容易ではない。手探りの取り組みは今も続いている。 「まだ渡っちゃだめよ」「気をつけて」。新学期が始まった6日朝、広小の保護者、地域住民、教員が通学路で児童に声を掛けた。校区内のバス停や交通量が多い12カ所に、計約50人が立った。 新1年生が通学に慣れるまで約1カ月間、毎日の登下校で続ける見守り。昨年の事故後に始め今年も続ける。岡秀次校長(59)は「地域が一体となり、車の危険性を根気強く教える」と説明する。 保護者と教員、住民は、学期ごとに危険個所の情報共有などを目的に会合を開催。保護者を中心に、1カ月の集中的な見守り期間の後も月3、4回、声掛けを続けてきた。 ただ、活動回数の多い一部の保護者の負担が大きいのも現実。折本和彦PTA会長(47)は「今春も1カ月の限定だからできる。どれくらいの人が、どれだけ続けられるかは分からない」と明かす。 幅員約3メートルで離合が難しく、交通量も多い事故現場のバス停付近。市と県警は3月中旬、横断歩道を新設した。側溝にふたをし白線で区切った歩行者スペースも確保した。 改善はされたが、2年生の娘を持つ主婦(35)は「歩行者スペースはランドセルがはみ出すような狭さ」と指摘。別の場所を含めてバスの前を横切る児童をまだ見かけるといい「横断歩道を増やしてほしい」と求める。 市教委は事故後、市内全51小学校に児童が事故防止を訴える「子ども交通安全推進隊」を発足させた。新入生対象の交通安全教室も開いたが、細川司学校安全課長は「子どもの安全を守るために、地域や保護者の協力は不可欠だ」と訴える。 ただ、広小に息子2人が通うパート主婦(37)は、見守り活動の現状を受け「熱心な人ばかりに負担をかけられない。集団登下校やスクールバスで対応しては」と提案する。 今春、双子の娘を入学させた折本PTA会長は「できるだけ見守りを続けるが、大人が教えるだけでは児童が自分で自分の身を守る意識は育ちにくい」と実感する。見守る児童との距離感が新たな課題に浮かんできた。(根石大輔)
(2010.4.8)
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