中国新聞


子ども自立援助 岡山の試み
「職」と「心」支える基地に


photo
自立援助ホームの中は家庭のようだ(岡山市)

【社説】 虐待など何らかの理由で家を出て働かざるを得なくなった。あるいは職を見つけて養護施設を出ていく。そうした子が、住む場所に困るケースが出ている。

 家賃を払う力がなく、間借り先や住み込める職場が見つからない場合である。これでは社会に出る始めからつまずいてしまう。

 おおむね15〜20歳のこうした子を受け入れるのが「自立援助ホーム」だ。ただ11年前に児童福祉法に位置付けられたものの、まだ全国でも約60カ所と少ない。

 そんな中で岡山市のNPO法人「子どもシェルターモモ」が、自立援助ホームに加え、緊急避難用のシェルターも設けるなど、積極的な動きを見せている。

 悪条件を抱えながら仕事をしようとする子どもたちに、社会はどんな手を差し伸べたらいいか。この試みを参考にしたい。

 農家を改造して4月に開所したホーム(定員6人)には、男子4人が住んでいる。

 少年院を仮退院しても帰る家がない。養育放棄された。母との折り合いが悪く空き家などを転々としていた。虐待を受けていた…。福祉事務所や児童相談所などを経てやってきた子である。

 職員は3人。夕食は用意するが、朝昼は自分でつくる。本人負担は月3万円。2人はアルバイトなどで働き、2人は職探し中だ。家庭的な雰囲気。打ち解けた女性ボランティアには虐待体験なども話し表情も明るくなったという。

 9月にはシェルターも設けた。西日本では初めて。ホームが男子用なので、女子が短期で入れる場所にした。スタッフは3人。暴力を受けて母と一緒に婦人相談所に駆け込んでいた子ら16〜19歳の3人が利用した。いずれは女子用のホームも新たにつくることを考えている。

 「モモ」を立ち上げたのは、弁護士や福祉関係者らである。保護者なしで社会に出ていかなくてはならない子のハンディを、現場でよく知る立場にある人たちだ。

 ホームについては法改正で4月から国などの「措置費」が出るようになり、金銭的な心配が少なくなったことも背中を押した。

 こうした活動は、地域によって温度差があるようだ。中国5県で先行している鳥取県には、援助ホームが既に3カ所。県は、措置費が実現するまでの間、民間の熱意を補助金で支えてきた。入所者には自立に必要な運転免許の取得費として30万円出すなど手厚い。

 ホームは山口、島根にもそれぞれ1カ所あり、ないのが広島。「民間から設立計画が出たらどんな支援ができるか、来年度考える」(広島市)という段階だ。

 親を頼れず、心の傷も抱えての独り立ちは、相当厳しい。まして困ったときに誰も当てにならなかったとすれば、疎外感は相当なものだろう。高じると暴発にもつながりかねない。

 寄り添って受け止め、本人が力を蓄えるための安全基地を、民間と行政の協力で整えられないだろうか。

(2009.12.7)

【関連記事】
自立援助ホーム、広島ゼロ 中国5県唯一 (2009.3.8)



子育てのページTOPへ