中国5県唯一 県・市に支援要望 ▽家庭に戻れぬ少年受け入れ 児童養護施設などを出た後、さまざまな事情で家庭に戻ることができない少年を受け入れる「自立援助ホーム」設置が全国で進む中、広島県は中国5県で唯一、空白状態が続いている。独自支援をする自治体もあり、関係者からは認可する広島県や広島市に支援を求める声が出ている。 自立援助ホームは、児童養護施設や少年院を出た少年が児童相談所や家庭裁判所を通じて入所する。家庭環境などを理由に帰る場所がなく、自立を強いられる20歳未満が対象。働きながら、ほかの少年や指導員と共同生活をして自立を目指す。 ホームは都道府県や政令市の認可を受け、NPO法人や社会福祉法人、自治体などが設置・運営する。全国自立援助ホーム連絡協議会によると、4月現在、全国で設置されているのは24都道府県に54カ所と5年前の約2倍に増えた。中国5県では鳥取県に3カ所、島根、山口県にそれぞれ1カ所あり、岡山県は4月に1カ所できた。 広島県では入所希望者は県外に出て行かざるを得ないのが現状。今のところ、設置の具体的な動きはなく、福祉関係者の多くは設置に踏み込めない理由として「人件費など負担が大きく、運営が難しい」と話す。 厚生労働省は、これまで施設ごとに年725万〜627万円の補助金を支給していたが4月から入所者1人につき月約20万円を支給する制度に変更した。設置を検討する広島県内の法人は「入所者の数は変動しやすく、国の支給だけでは運営は厳しい。自治体の支えは不可欠」と訴える。 広島県は「ニーズは把握しているが、財政難もあり県単独の支援方針は出せていない」と説明。広島市も「前向きに検討している」というものの、具体化には至っていない。 独自に上乗せの支援策を実施している自治体もある。鳥取県は10年前から運営費の一部を支援。昨年度は施設ごとに約320万円の補助金を出した。同県は「国の制度変更の影響を見ながら必要な支援をしていきたい」と支援を続ける方針だ。 全国自立援助ホーム連絡協の平井誠敏事務局長は「日の当たりにくい分野だが、支えが必要な子どもの援助をどこまで真剣に考えるか、行政の力量が問われている」と指摘している。(鴻池尚)
(2009.3.8)
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