西田篤(広島市こども療育センター「愛育園」園長) 夏休みの前半は、宇宙関連の話題が続いた。日食の日、当園の子どもたちも、グラスをかざして次々と空を見上げた。デジカメで写す子あり、うんちくを傾ける子あり、それぞれが世紀の天体ショーを楽しんでいた。 また、その少し前には、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟も完成した。東京・お台場の「日本科学未来館」(毛利衛館長)にはISSの常設展示があり、先日訪れた際には多くの子どもでにぎわっていた。 未来館の展示は、大人でも楽しめるレベルのものであり、子どものころからそうしたものに触れる幸せを思った。そして、わが家に「宇宙食」を買って帰ったところ、子どもたちは奪い合うようにしてそれを食べた。 一方、夏休みは、運動に打ち込んできた子どもにとっても、集大成の時期である。「最後の夏」をかけた戦いが、各地で繰り広げられている。そんな中、最近「サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法」(池上正著・小学館)という本と出会った。著者はジェフ市原のジュニア担当コーチであり、「肯定する」「気づかせる」といったキーワードに沿って書かれた内容には、子育て全般に通じるものがある。 例えば、「夢を持たせる」の章では、タイトルのかたわらに「子どもより先に自分の望みを語っていませんか?」とある。指導者や親の行き過ぎを戒め、「中途半端にスポーツをしてきた両親(指導者)の子どもはかわいそう」と説く。自分の夢半ばを子どもに託してしまいがちになるからである。 親子の関係が行き詰まるケースの中には、自らの心の埋め合わせのため、わが子に過剰なものを向けてきた親の姿を感じることがある。もちろん、無意識な言動で子どもを縛ることを含めてだが。 見上げる空には夢が広がる。私たち大人も、自分の夢を自分なりに実現していく心の余裕を、どこかに持っていたいものだと思う。 (2009.8.3)
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