広島県内 委託率、全国平均下回る5.8% 家庭環境に恵まれない子どもを都道府県や政令市に認定された里親が育てる「里親制度」が普及していない。広島県内でも児童擁護施設に入所している子どもに対する里親に養育されている子どもの割合は6%弱にとどまる。児童虐待の増加に伴って、児童養護施設と乳児院が満員状態に近づく中、国は四月に児童福祉法を改正して里親制度の普及を目指す。 県内では里親三十六世帯が子ども四十六人を養育している。一方、児童養護施設と乳児院計十三施設で暮らす子どもは七百五十三人(二〇〇八年末現在)で、定員総数の九割を超えている。 里親制度普及の目安となる、公的な養育が必要な子どもに対する里子の割合「里親委託率」は5・8%で、全国平均の9・9%(〇七年度末現在)を下回っている。中国地方の他県は島根、鳥取14・4%▽山口9・0%▽岡山5・1%―となっている。 広島県と広島市を合わせて百四十五世帯が里親に登録しているが、実際に子どもを養育しているのは25%に満たない。子どもの保護者から里親に預ける同意を得にくいのが大きな原因となっている。養子縁組をしない限り戸籍上の変更はないが、保護者側が「親子の縁が切れる」と思い込むケースが目立つという。 別の理由として、県里親連合会の田坂素臣会長は「子どもの年齢や性別などが里親の希望に沿わない場合もある」と説明する。 県内の〇七年度の児童虐待相談件数は千五百八十件に達した。前年度より七十二件増えて過去最多となった。児童養護施設などに入所する子どもも増えている。広島市児童相談所(東区)の磯辺省三所長は「施設はほぼ満員の状態。里親制度を活用したい」と訴える。 児童福祉法改正に伴い、国は養子縁組する「養子里親」と養育のみを担う「養育里親」を明確に区分。養育里親への手当を厚くして、希望者アップを目指す。県こども家庭課は「里親の登録を増やせば、子どもに合った家庭を探しやすくなる」として、法改正を機に里親制度の周知へ力を入れていく。(久行大輝)
(2009.3.31)
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