広島大大学院教育学研究科 地域の児童 学生が指導
学習につまずいた子どもを支援する、広島大大学院教育学研究科(東広島市)の取り組みが評価を上げている。担当の教授が相談に乗るだけでなく、算数が苦手な児童を募り、教員志望の学生がマンツーマンで指導する。地域に貢献しながら学生を育てるという、二つの目的を兼ねた試みだ。(田中美千子) ▽週1回マンツーマン 支援の現場を訪ねた。同研究科の教育実践総合センター。毎週水曜日に児童十五人が集まる。大学の前、後期に一度ずつ、市立小四―六年生を対象に受講者を募る。昨年十月から今年二月までの今期は、定員の約三倍の応募があり、抽選で選んだ。 児童は週一回通い、一時間にわたって学生が用意したプリントを解く。ある女児は苦手な文章題に挑んでいた。学生は間違えた問題を指して「どうやって解いた?」。女児に説明させ、原因を見極める。「こうすれば分かるかもよ」。次は数の増減を図にしてみせた。「ホントだ」。女児の目が輝いた。 同研究科の岡直樹教授は「公式を機械的に当てはめただけでは、答えが出ても分かったことにならない。考えて答えを出す喜びを実感させたい」と強調する。学生は毎回、事前に指導案を準備。児童を帰した後は活動を報告し合い、効果的な指導法を検証する。 ▽勉強後にはレク 個別指導は二〇〇六年秋に始めた。学習意欲を高めるため、勉強後はいつもレクリエーションを盛り込む。参加費は半期につき保険料の千円だけだ。 「学校は分からないまま授業が進む事があるけど、ここは何でも聞ける」「算数が好きになった」。児童の反応は上々だ。希望者が増え、受け入れ枠を初年度の十人から徐々に拡大。小学校低学年や中高生の電話相談にも応じ、必要があれば個別に面談してつまずきの解消を図っている。 学生もやりがいを実感する。教育学部三年長尾はるかさん(21)は「子どもは想像もつかないような場面でつまずく。実践して初めて分かった」。現在、院生を含む約三十人が自主参加。担当児童がいなくても見学に回る。 ▽窓口に依頼続々 〇七年、新サービスを加えた。「心の問題」への対応だ。「娘が不登校になった」「発達障害があり、学級になじめない子どもがいる」…。親や学校教諭の悩みも聞く。 主に対応するのは教授陣や非常勤の臨床心理士だが、こちらも学生の実践が目的の一つ。希望者をカウンセリングに同席させ、依頼内容が複雑でなければ、担当にすることもある。 ニーズは高い。学習や心の問題の相談窓口を「にこにこルーム」と名付けて受け付けを始めると、市内外から依頼が相次いだ。〇八年四月、ニーズの高い広島市中区千田町のビルの一角に別室も設けた。学習指導をして、心の相談も受ける。 試みは〇七年度、文部科学省の現代的教育ニーズ取組支援プログラムに選ばれ、三カ年の財政支援を受ける。学習の個別指導の対象年齢拡大も検討中だ。 後に続く大学も出てきた。広島女学院大(広島市東区)の幼児教育心理学科は昨秋から、地元児童に算数を個別指導。一月、八人がプログラムを修了した。今春にも、第二期生を応募するという。 広島大大学院の相談申し込みはTel082(424)3469。 (2009.2.16)
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