中国新聞


出産と育児 復帰に道
両立へ手探り続く
山口赤十字病院


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診察する国近医師。「患者さんが職場復帰を待っていてくれた。だから続けられる」

 一歳の長女を寝かせようと思った午後八時すぎ、電話が鳴った。緊急時用に二十四時間持ち歩くPHS。内科病棟から「患者の病状が悪化した」との呼び出しだった。勤務医の夫は仕事で不在、実家は県外で頼めない。「置いては行けない」。長女を連れ病棟へ向かう。看護師に預け、治療に三時間。何とか乗り切った。

 山口赤十字病院内科部長の国近尚美医師(43)。一昨年五月に出産、半年で現場に復帰した。主治医制では、担当患者の異変があれば駆け付ける。「命を預かる以上、治療が最優先。子育てとの両立は、その時その時のやり繰り」

 ▽29歳以下36%

 三十三万人の山口・防府医療圏で、唯一の呼吸器科の勤務医でもある。当直を免除されている以外は、外来や入院患者の診察、検査とフルタイム。長女は平日の朝から午後七時まで院内保育所で過ごす。

 技量アップのための時間確保も苦労する。「診察の合間の『細切れ時間』を使って論文を読むことも。専門分野の研究会に託児があれば助かるのだが」

 年々増える女性医師は、二十九歳以下では約36%(二〇〇六年の全国平均)と、若い世代で顕著になる。医師不足の中で、貴重な戦力。しかし、出産・育児で仕事がしにくくなる状況は変わらない。

 出産に踏み切る時、国近医師は悩んだ。「圏域で呼吸器科の勤務医が一人、という社会的責任を考えた」。他の内科の循環器、消化器と比べて医師が少なく、代診の確保が厳しいからだ。復帰は患者が多くなる十二月に合わせた。

 ▽運用面で遅れ

 各病院は院内保育所の整備や当直免除など、働きやすい環境づくりを急ぐ。だが、運用面はまだまだ。国近医師も勤務医としては病院で初めて産休・育休を取った。規則の確認、休みの取得や復帰後の働き方の相談など、すべてが手探りだった。

 復帰後すぐに技量の勘が戻るか不安もあった。院内保育所で手作りのお弁当がいるとなると負担が増す。「『百二十パーセントで働かないとダメ』ではなく、八、九割でもいいと。理解があれば戻りやすい」と言う。

 「女性医師が仕事を続けられるなら、男女を問わず、みんなが働きやすい環境ということ」。待ってくれる患者のため、後進のため、道づくりが続く。(高橋清子)


女性医師数の推移など 厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」によると、県内の女性医師は、2006年が451人で全体の13・4%(全国は17・2%)を占める。1998年は11・6%(同13・9%)で、1・8ポイント増えている。医師不足の顕著な科で高い傾向にあり、小児科28・7%、産婦人科17・4%、麻酔科20・3%(いずれも06年)。08年度の山口大医学部では、女子学生が35・8%。4割を超す学年もある。

(2009.2.5)

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