【社説】 便利な携帯電話には落とし穴もある。インターネットを通じ、いじめや犯罪の温床となる学校裏サイトや出会い系サイトなどにもつながる。未成熟な子どもがのめり込まないよう、使用制限に乗り出す行政の動きが相次いでいる。 兵庫県は今月中旬、十八歳未満が使う携帯電話にフィルタリング(閲覧制限)機能を義務付け、有害サイトを見られなくする条例改正案をまとめた。大阪府の橋下徹知事は今月初め、府内の小中学生に学校への携帯持ち込みを禁じる宣言をした。 児童生徒の「ネットいじめ」は二〇〇七年度、約五千九百件と前年度より約一千件増えた。出会い系サイトで性犯罪などに遭う事件も後を絶たず、被害者の大半は十八歳未満で携帯からのアクセスという警察庁の統計もある。放ってはおけない。 問題は、見せない、持たせない―という制限だけで片付かないことだ。子ども自身の力を高める努力が欠かせない。情報が有益か、危険でないかと見分ける判断力。子どもの心情にも気を配る必要があろう。携帯依存の裏には、人寂しさや自制心の弱さがあるといわれる。 そのためには、子育ての視点が大切だろう。ところが日本PTA全国協議会の調査によると、ルールを決めて携帯を使わせている家庭はまだ少数派にすぎない。 おまけに、利用時間や内容を制限する家庭内ルールが「ある」と答えたのは、中学生の保護者の四〜六割に対し、生徒の方は一〜三割にとどまっている。保護者と子どもとの意識のずれは無視できない。 携帯は、ネットに接続できる情報端末「ケータイ」としての機能を備えている。その先には、家出、自殺サイトもあれば、オークション詐欺などに巻き込まれかねない面もある。子どもには電話とメールの機能に絞って手渡すのも一つの考え方だろう。 冬休みに「ノー・ケータイ」デーを試みてはどうだろう。せめて一日、携帯なしで過ごしてみる。ありがたみも、ないと不安になる依存度もチェックできる。「意外に何ともない」と気付くかもしれない。 政府の教育再生懇談会は、学校への持ち込みを原則禁止する素案をまとめ、法整備も視野に入れている。規制より先にまずは家庭内で考え、学校との間でもルールを決める。当たり前のことから始めたい。 (2008.12.21)
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