中国新聞


親と子のSOS <上>
向き合う


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「周囲の気付きが、親子を密室の虐待から救い出す」と強調する中田弁護士

 なかた・けんご 1959年、広島市南区生まれ。刑事事件の弁護を通じ、虐待経験などが少年犯罪に影響していると感じ、弁護士仲間やボランティアと「ホットライン」を始める。中3、中1、小1の娘の親。ホットラインは火、木、土曜の午前10時―午後3時。Tel082(246)6426。

 児童虐待が社会問題になり久しい。核家族化などによる育児不安や親のストレスなど、虐待を誘発する要因にどう向き合うか。13、14の両日に広島市である日本子ども虐待防止学会の学術大会を前に予防策を探る。(石川昌義)

 大会実行委員会の副委員長でもある中田憲悟弁護士(49)=広島市中区=は、二〇〇一年から相談電話「子ども虐待ホットライン広島」を運営する。年間約百件の相談の七割は「加害者」である親たちからだ。

 ―相談内容は。

 「言うことを聞かない子どもについ手が出た」というのがほとんど。相談できる友人がいなかったり、多忙な配偶者が話を聞かなかったり…。悩みを内面に抱え込んでいる。

 ―虐待の理由は。

 最も多いのが「しつけ」。うそや悪さを謝らなかった場合、手が出ることはある。問題は、即効性がある体罰を多用することだ。恐怖におびえる子どもは無表情になり、親は「反省がない」と腹を立てる。やがて、しつけが親のストレス発散に変質してしまう。

 ―虐待死など重大事例の特徴は何ですか。

 「密室性」だ。配偶者の無関心や非協力、近所付き合いの希薄さが、暴力を密室に閉じ込める。育児で家にこもりがちな妻が話し掛けても、夫は「疲れている」と拒絶。ほとんどの夫に覚えがあるでしょう。苦しさを訴えても拒絶される絶望感が事態を悪化させる。

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 ―周囲はどうかかわればいいですか。

 よくないと分かっても手が出る親には、「大変じゃね」と寄り添うこと。そして、話を聞いてあげてほしい。しつけという健全な動機が、ストレス解消の虐待に変わる前に気付き、会話するだけでも孤独が薄れる。

 ―聞く耳を持たないケースもあるのでは。

 一家全員が「体罰はしつけ」と暴力を肯定している場合、近隣が心配しても「口を出すな」と態度を硬化させる。そんな人には、尊敬する人や力関係が上位の人の言葉しか通じない。助言を促すよう働き掛けたい。

 どうにもならない場合は、児童相談所に通報してほしい。だが児童相談所も常時監視はできない。細かな変化を職員に知らせ続けることが大切だ。

 ―全国の児童相談所への通報は昨年度、四万件を超えました。

 虐待への関心の高まりだけでなく、少子化も一因。弟や妹を世話した経験のない一人っ子が親となるケースが増え、子育ての悩みを抱え込んでいるのでは。親子が発するSOSに周囲がどう気付くかが問われている。

(2008.12.12)

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