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鳥取「学力テスト」 非開示でよかったのか


 【社説】全国学力テストの市町村別、学校別の成績を開示するかどうか。鳥取県情報公開条例に基づく請求に対し、県教委は「非開示が適当」という判断を下した。「過度の競争や序列化を生みかねない」という懸念や反発の声に押され、「開示すべきだ」との県情報公開審議会の答申まで覆した。本当に、それでいいのだろうか。

 請求があったのは、二〇〇七年度、全国の小学六年生と中学三年生を対象に文部科学省が行った学力テストの鳥取県分である。もし開示を認めていれば、全国でも初めてのケースだった。

 住民の知る権利を保障する情報公開という観点からは、大きな後退とも言えるかもしれない。ただ、教育現場や家庭の動揺などを考えれば、やむを得ない面があるのも確かだろう。

 鳥取県の情報公開条例には、小・中学生の学力調査については十人以下の学級を除き、集計結果を学級ごとの単位まで開示しなければならない―とする、ユニークな条項がある。

 文科省の学力テストに先立つ〇二年度、児童・生徒の基礎学力調査を県独自でスタートさせたからだ。県議会から「税金で調査する以上は、データを公開するべきだ」と注文が付いた。

 〇六年度までに四回続けた学力調査では、学級ごとの成績まで明らかにしても、表立った反対の声は出なかった。ペーパーテストの点数が独り歩きしないように、家庭での学習態度や生活習慣のチェックと併せて調査結果を知らせた配慮が、保護者たちにも理解されたからだろう。試験科目も、国語と数学(算数)だけの国のテストに比べ、県の調査は五教科(小六は四教科)と多様だった。

 これに対し、全国学力テストは一九六〇年代に、地域間や学校間の競争を激化させるとして、中止に追い込まれたいわくつきのテストである。安倍晋三前首相が「教育再生」を掲げる中、学力向上などの判断材料にするため、〇七年四月に復活させた。私学の参加もあって、結果を公表することで「保護者に学校選択の材料を提供できる」とされた。

 こうした状況を考えれば、今回の開示の動きに「学校が序列化されてしまう」と反発が出たのも無理はない。「非開示」を求める要請書が、県内の市町村教委の研究協議会や教職員組合をはじめ、全国の教育関係者などからも届いている。

 もちろん、基本になるのは、子どものために、何をどうするのがベストかを考えることだろう。学校や教委、教員だけで判断するのでは、独り善がりになりやすい。汚職事件で明るみに出た大分県教委の閉鎖的な体質を持ち出すまでもあるまい。

 子どもたちのプライバシー保護の問題もあるだろう。どのような形にしていけば、学校現場の混乱が少ない開示が可能になるだろうか。保護者や地域住民を含めて、もっとオープンに議論を深めてほしい。

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