中国新聞


学力テスト結果
鳥取、非開示を決定
県教委 現場の反対尊重


 文部科学省が実施した全国学力テストの市町村別・学校別結果を開示するよう求めた鳥取県情報公開審議会の答申を受け、県教委は十一日、臨時教育委員会で、二〇〇七年度と〇八年度分を非開示とすることを決めた。

 開示すれば全国初だったが、市町村教委や教育現場の開示反対の声を尊重した形だ。県情報公開条例は全県的な学力調査結果について十人以下の学級を除き、情報を開示するよう求めており、今回の決定は今後、議論を呼びそうだ。

 臨時教育委員会には山田修平委員長、中永広樹県教育長ら六人の委員全員が出席。中永教育長は「県条例をきちんと解釈しなければならない。教育現場の思いをすべてに優先するのはどうか」と開示に理解を求めた。

 しかし、ほかの委員から「子どもへの影響を考えれば開示がプラスになるほど社会は成熟していない」「答申は教育論を理解していない」など反対意見が続出した。

 山田委員長が「〇七年度、〇八年度は非開示。以降は審議会の答申に示された方向を受け止めて検討する」と提案し、中永教育長を除く委員が賛成した。

 昨年十月に地元新聞社の記者が〇七年度分について開示を請求。県教委が非開示を決めたため、記者が異議を申し立て、県情報公開審議会が七月、県教委に開示するよう答申していた。(時永彰治)


 【解説】開示か非開示かで揺れた全国学力テストの鳥取県内の市町村別・学校別結果は十一日、県教委の臨時教育委員会で異例ともいえる採決の結果、非開示と決まった。県情報公開条例に則して開示方針を示した県教委と「開示で学校の序列化が進む」とする教育現場との対立回避を優先した形だが、なぜ県条例に反してまで開示しないかの説明は不十分なままだ。

 県情報公開条例は非開示の条件として「小中学校の全県的な学力調査の結果で、十人以下の学級」と明示している。このため、県独自の学力テストではこれまでも市町村別の結果を公開してきた。

 山田修平県教育委員長は、全国学力テストの市町村別・学校別を非開示とした理由について「児童・生徒にとって最も大事なことは何かを基本に教育論から導き出した」と説明する。県条例との整合性についても「矛盾しない」とするが、いずれも説得力に欠ける。

 今月五日まで開かれた教育現場や保護者、市町村教委との意見交換会。校長会や市町村教委からは反対の声が大多数だった半面、保護者からは両論が出た。県民への電子アンケートでは回答者の七割以上が開示を支持した。

 一連の協議や意見交換会などは開示か非開示かに集中するあまり、どのように学力向上を図るかなどの議論には至らなかった。「教育は誰のものか」。県教育界に一石を投じた今回の問題を機に、教育現場だけでなく、保護者や地域も議論を深めてほしい。(時永彰治)

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