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たゆまず歩む 地域とともに 中国新聞

「再生 安心社会」

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第1部 模索

4.重い負担

−実効性 検証が不可欠−

 二十八基に約一億千四百万円―。二〇〇四年度と〇六年度、岡山県が「スーパー防犯灯」の設置にかけた予算額である。

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上方からの防犯カメラを備える通報システム「スーパー防犯灯」。犯罪摘発につながったケースはまだない(岡山市奉還町)

 県警によると、スーパー防犯灯に設置されたインターホンによる通報は今年十月末までに百八十四件。ところが、犯人逮捕などにつながった実績はなく、通報は「いたずらばかり」。担当者は「抑止効果はあるはず」と話すものの、実効性の証明はされていない。

 昨年十二月、小一女児が下校中に殺害される事件が起きた栃木県日光市。事件直後、防犯灯五百三十基を整備した。百二十六カ所の公園も総点検。見通しを良くするため植木の剪定(せんてい)なども進めた。総額約四千万円に上った。

 だが、抑止効果は未知数だ。「決定的な解決策ではないかも。でも、とにかくやるしかないんです」。市生活安全課の大島仁章課長は、なんとか住民の安全への願いに応えたい胸中を明かす。

 一方、安全への投資がおぼつかない自治体も少なくない。

▽目立つ多額投資

 江田島市では、学校で安全対策などを指導する地域学校安全指導員(スクールガード・リーダー)の配置が、国の事業枠の中で一人分認められた。指導員は市内十四の小学校で計十二時間ずつ指導する。しかし、市教委学校教育課は「これだけで十分なのか…」と本音では増員を望む。

 人口約三万一千人の市が「子どもの安全」に掛ける予算は、年間約百万円。チラシやステッカーの作製が主な内容だ。地方交付税が減額される中、自前で指導員を増やすのは困難だ。

 「安心社会」が大きな行政課題としてクローズアップされる。コストの掛け方も同時に問われている。とりわけ悲劇に見舞われた自治体、警察は、住民の切実な思いに応える必要がある。手探りを重ねつつ、多額な投資をする傾向も目立つ。

▽住民寄付で設置

 木下あいりちゃん事件を受け、広島市は本年度、ソフト事業である「子どもの見守り活動十万人構想」に六千九百万円を計上した。

 一方、行政頼みにならない活動も芽吹き始めている。「安全のため、自分たちでできることは自分たちでやりたい」。廿日市市大野の第五区自治会の考え方だ。地区内の防犯灯七十二基を青色に替える費用は住民の寄付で用意した。活動費に回そうと、遊休地で栽培した野菜を試験的に売っている。

 愛知学院大法学部の小川富之教授(家族法)は「予算の額だけで地域の安全度は図れない。行政は施策がコストに見合っているか、住民の活動などと常に向き合い、検証する努力が欠かせない」と指摘する。(松本恭治)

2006.11.26