現場の声 聞いて結論を 政府の教育再生実行会議が、現在の大学入試センター試験の改革を提言する見通しになった。当初は廃止も検討されていたが、軌道修正し、入試改革と学習到達度テスト創設の2本立てになるとみられる。 提言は来月にもまとめ、中教審で具体的な制度設計を進める。大学入試をどう改革するかは日本の教育全体の行く末に関わる問題といえよう。多感な10代にとっては高校生活を左右する。現場の声を十分に聞いたうえで結論を出してもらいたい。 センター試験は全国公立大学を対象にした基礎学力試験である共通1次試験が前身である。1979年に導入され、その後、私立大学の参加を広く促そうと入試科目を弾力化し、90年に現行制度に改められた。 だが、それから20年を超え、制度疲労は否めない。大学は1点刻みで序列化され、出題6教科29科目は細分化されすぎているとの指摘がある。受験生にとっても、一回だけの試験は体調や天候など当日のアクシデントに左右されやすい。 何より思考力や判断力を含めた幅広い学力を問うものなのかどうか、疑問があろう。 検討中の提言案は、まず試験結果を大くくりに段階評価する複数回の共通試験を導入するという。センター試験の蓄積や利点は生かしつつ、「1点刻みの序列化」という批判をかわしたいのだろう。その後実施する大学ごとの選抜では面接や論文を重視するよう求める考えだ。 受験生は入試に付きものの「一発勝負」のリスクを避けることができる。半面、1点刻みの方がかえって公平・公正を保てるのでは、という意見もあろう。今後検討の余地がある。 当初は現在のセンター試験を、高校在学中に複数回受ける学習到達度テストに置き換える方向だった。 だが、高校生や学校の負担が大きい、受験が事実上前倒しになる、などの懸念はつきまとう。このため、高校での学習内容がどの程度定着しているかを測り、指導に生かすためのテストに位置付けることで落ち着いたとみられる。 到達度テストは入試改革というだけでなく、高校教育の質の維持という側面もあろう。中間層の学力の高校生は、勉強時間が最近15年間で半減しているという民間調査結果がある。 もっといえば、到達度テストは一定レベルの高校生の学力を全体的に底上げする狙いがあるのではないか。授業履修に必要な基礎学力を入学前に付けておいてほしいという大学側の意向でもあろう。 ただし、高校生の学力低下は「全入時代」の大学側の選抜の手法、特に推薦入試やアドミッション・オフィス(AO)入試などにも原因はありはしないか。その再検討を抜きに、共通試験の部分だけをいじることはできないだろう。 安倍晋三首相は「『大学力』は国力そのもの」と位置付け、「グローバル化した社会で活躍できる人材の育成」を掲げる。そのためには「高校と大学の接続(高大接続)」のあり方は避けて通れない検討課題だが、大学側も人材を育てる明確なビジョンを持ってほしい。 高校教育、大学入試、大学教育の改革が「三位一体」となってこその教育再生ではないか。 (2013.10.8)
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