中国新聞


小中生の日本語教育に工夫 福山市内、対象51人
教諭が個別に補習、他校と交流の場を設置


   

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児童に扇子や浴衣といった日本文化と言葉を教える竹村教諭

 福山市内の小中学校が、長期間の外国暮らしなどの理由で日本語をうまく理解できない児童・生徒の教育に、さまざまな工夫を凝らしている。日本語の特別授業、同じような子どもとの交流の場づくり…。ただ勉強が分からず高校を中退する生徒が出たり、専門ではない日本語指導に教諭が戸惑ったりなど、手探りの中の課題も多い。

 「これは扇子。『扇子であおぐ』と言います」。22日、福山市の西深津小の教室で竹村みずほ教諭が1、2年生の男女3人に説明していた。3人の親は両方、または一方が中国人。日本語で日常会話はできるが、家庭内では中国語を使うことが多いため難しい言葉を知らない。特に社会や理科の授業を理解するのに、大きな壁になるという。

 ▽進学先と連携

 同校の対象児童は1〜6年生の11人。週3回程度、竹村教諭が通常授業の代わりに日本語を教えている。「日本語も母国語も中途半端な理解では将来の就職にも響きかねない。今のうちにしっかり教えたい」。進学先となる中学校教諭とも、情報共有に努めている。

 市教委によると、同様の小中学生は現在、計12校に計51人いる。駅家南中には、昨年末からフィリピン出身の2年男子が通う。当初は全く日本語を理解できなかった。1日2時間、教諭がマンツーマンで日本語の勉強とともに数学や国語の補習に取り組んでいる。

 青山真治校長は「授業が分からないと学習意欲や自尊心の低下につながりかねない」と指摘。校内に同じ課題のある生徒がいないため、孤立を防ごうと他校の生徒と交流の場も設けている。

 ただ少人数の生徒に対する特別なサポートだけに、課題は多い。「進学で学習レベルが上がり、ますます授業についていけなくなることがある」。日本語教室を無償で開くグループの代表を務める駅家町の客本牧子さんは、小中高間での情報共有の必要性を指摘する。

 「教え方が正しいのか不安。他校の工夫を学ぶ機会がほしい」。教諭からは、専門でない日本語指導の担当になった困惑の声が聞こえる。

 ▽「校内に多文化」

 松永高は昨年9月、外国人生徒を「講師」にした外国文化講座を校内で始めた。

 初回のスペイン語講座には、生徒と教諭約60人が参加。講師を務めたペルー出身の谷口ディエゴ君(18)は「みんな関心を持ってくれた。母国の文化を誇らしく思えた」と語る。小学3年生で来日。勉強の自信は持てずに来た。高校を中退する同郷の先輩も多かったという。今は、姫路独協大外国語学部の1年生だ。

 「外国暮らしが長い生徒の存在は、校内に多文化をもたらしてくれる」と小田均校長。「孤立を防ぎ、メリットを生かす工夫をこれからも考えたい」と話している。(久保友美恵)

(2013.5.26)





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