中国新聞


【社説】広島県の障害者就労支援
サポーター活動強めたい


   

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講師を交えて討論する講座参加者

 障害者の就労機会を広げる施策の一つとして広島県が今月、派遣型ジョブサポーターの養成講座を開いている。3年ぶりだ。

 障害者を雇う企業に出向き、作業環境や接し方について助言し、障害者の相談にも応じて職場への定着を図る仲介役である。

 県が2007年度に単独事業として導入。翌年までに64人を養成し、県内7カ所の障害者就業・生活支援センターに登録している。

 ところがここ1、2年は活動が振るわず、昨年度の実働はわずか8人にとどまった。自身も仕事を持っているサポーターと企業側の日程調整が難しいケースが目立ったという。国が09年から緊急雇用対策で障害者相談を始めたのも影響したようだ。

 県内3カ所で計約40人を募る今回の講座には、常時60人程度が活動できるよう中長期の支援態勢づくりを急ぐ狙いがある。

 先日、福山市で開かれた講座には障害者団体の役員のほか「何か役に立ちたい」という主婦や就職活動中の若者も参加。障害者と向き合う心構えから作業現場での問題と解決策に至るまで、各分野の専門家から学んだ。

 障害者問題に携わっていなくても、子育て体験を応用したり同世代の障害者の話し相手になったりと、サポーターができる活動は幅広い。こうした人材養成には、障害者の雇用にまつわる偏見や誤解をなくす啓発の側面もあろう。

 障害者雇用促進法が従業員56人以上の企業に義務づけている法定雇用率は1・8%。達成企業の割合は広島県が51%で、全国平均の47%を上回ってはいる。

 しかし一定数の障害者を雇っている企業は着実に人数を増やすのに対し、新規に雇用する企業がなかなか増えない。長引くデフレ不況も影響していよう。

 国はすでにジョブコーチ制度を設け、福祉施設や特別支援学校、病院職員の経験者らを常時、各県の障害者職業センターや関係施設に配置している。県内では計18人。県が「これでは不十分」と養成したのがサポーターでもある。

 ただ、専門知識や経験が豊富で企業の障害者向け求人開拓まで引き受けるコーチと、就労の話がまとまってから一定期間だけ動くサポーターとの違いは大きい。

 専門家を多数養成できれば理想だが、国や自治体の財政事情から制約もある。

 具体策として、よりきめ細かな対応が必要とされる精神障害分野を重点に専門家を置く。一方でサポーターは本来の活動のほか、ボランティアで雇用の先進例を普及する役割を担ってはどうだろう。

 呉地区の支援センターは新たな試みとして、サポーターがコーチに同行。助言方法を教わってから単独で企業訪問を重ね、障害者を支援する方針である。連携による効果が期待できそうだ。

 サポーター同士の経験交流や情報の共有化も欠かせない。マンパワーの組織力で、雇用のバリアーをなくす態勢を整えよう。

(2011.10.17)


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