中国新聞


「郷土の誇り育む記述」、育鵬社の歴史教科書採択
益田市教委、理由説明 反対派からは抗議


   

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育鵬社の歴史教科書を手に、採択理由を説明する三浦教育長(右)

 益田市と津和野、吉賀町の公立中学校で来春から使用する歴史の教科書が、育鵬社(東京)版に決まった。同社は「新しい歴史教科書をつくる会」と協力した扶桑社(同)の子会社。益田市教委の三浦正樹教育長は1日、記者会見し「郷土への誇りを育む記述がある」などと採択理由を説明したが、地元反対派からは抗議の声が上がった。

 育鵬社の「新しい日本の歴史」で、島根県内5採択地区協議会のうち唯一選んだ。2012年度から4年間、3市町の中学生約600人が使う。

 3市町教委でつくる益田採択地区協議会の会長を務めた三浦教育長は、育鵬社版が益田市美都町出身の医学者秦佐八郎の業績を紹介した点を挙げ、「掲載は育鵬社版が唯一。郷土の偉人に誇りを持つことができる」と評価した。東京裁判と昭和天皇について紹介した「読み物コラム」「人物コラム」についても「資料が豊富で多面的な学習ができる」と利点を強調した。

 協議会は、3市町教委の教育長と校長代表2人、保護者代表2人の計7人で構成。8月20日の会合で4人が育鵬社版を推したという。

 各委員の判断について、三浦教育長は「思想信条に関わり、自由な議論の妨げになる」と明らかにしなかった。内容への批判的意見については「文部科学省の検定を経ており、戦争美化の指摘は当たらない」とした。

 一方、前回の採択時に、育鵬社版の執筆メンバーが関わった教科書の不使用を求めた益田市のNPO法人「多文化共生と人権文化LAS」の福原孝浩理事は「近現代の対アジア関係について、一方的な記述が目立つ」と懸念を示した。

 県教職員組合(舟木健治委員長)も「侵略の歴史を偽り、日本国憲法を軽視、敵視している」との抗議声明を発表した。(石川昌義)

(2011.9.2)


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