事故で死去 広島の田中さん 子どもの学校 夫が86冊贈る
交通事故で昨年6月に亡くなった広島市西区の主婦田中かおりさん=当時(36)=の「文庫」が8日、残された子どもの通う中区の広瀬小にできた。夫で県職員の雅史さん(37)が、妻の名で寄贈した「天国からの贈り物」。命の大切さを伝える本を中心に、86冊を選んだ。 親子愛の強さを伝える動物の本、心を元気づけるスポーツ選手の名言集、心や体を説明する児童書…。図書室の一角。「田中かおり文庫」と掲げた本棚に、真新しい本が並ぶ。 かおりさんは、昨年5月24日午後3時ごろ、広島市西区の国道交差点を自転車で横断中、軽トラックにはねられた。頭を強く打ち、6月14日に入院先の病院で亡くなった。5年生の長女、3年生の長男、幼稚園に通う次女は突然、母を失った。 悲しみをこらえ、日常の生活に戻り始めた時、勤務の不規則な雅史さんに代わって、同級生の保護者が送り迎えを買って出てくれた。担任の先生はそれぞれ学校での様子を細かく報告してくれた。「かおりも天国で感謝しているはず」。雅史さんは本好きだった妻の名前で本を寄贈することを11月、同小に提案した。 「ご夫婦の思いに、胸がいっぱいになった。子どもたちには文庫ができた経緯や何のためなのかを考えて読むよう伝えたい」と中田浩志校長。そして雅史さんは「みんなに自分のような悲しい思いをしてほしくない。本を読んで命を大切にしてくれることが一番の願い」と静かに語る。(山本乃輔) (2011.3.9)
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