小学校再編 周辺部に不安 「寂れる」「通学心配」 住民理解へ具体案急務
安芸高田市が小学校の再編計画をまとめ、新年度から地元説明に入る。今後5年間で市内13小学校を7校にする構想。少子化の進行は深刻で「やむを得ない」との見方がある半面、周辺部では「学校までの距離が遠くなり、通学が不安」などの声が上がっている。(椎木一郎) 「はい、そこで跳んで」。同市高宮町の川根小。1、2年の計9人が体育の合同授業で跳び箱に取り組んでいた。「単独の学年だと体育の授業にならないので」と亀井聖(さとし)校長は説明する。 同校は児童数26人。3・4年、5・6年は既に複式学級になっている。秋の運動会や2月の学習発表会などは、児童だけでは少なすぎ、住民と一緒に開く。地域の一体感醸成も狙ってひねり出した策だ。 ▽複式学級増える 現在、複式学級があるのは同小と八千代町の刈田小の計2校。市教委によると、少子化に伴い、数年のうちに5校で複式学級が発生する見通しという。 市は昨年10月、学校規模適正化推進計画の素案をまとめた。それによると、市内6町のうち、吉田町を2校とする以外は町に1校ずつ、計7校に集約。1校の児童数を増やし、野球、サッカーなどのクラブ活動や社会性を育む集団活動などができる教育環境を目指す、とした。2011〜15年度での完全実施を打ち出している。 佐藤勝教育長は「現在でも地域の協力がなければ寂しい運動会が多い。音楽などの教諭が掛け持ちで十分な専門教育が受けられない学校もある」と再編計画の背景を話す。 保護者や地域住民も、児童数減少の現実や教育環境充実の必要性を肌で感じてはいる。だが、学校が消えるのが想定される地域は戸惑いが隠せない。 76年前、住民たちの寄付で建築した木造校舎が自慢の吉田町桂の郷野小。地域住民は校庭の芝生の手入れをし、近くの江の川での魚のつかみ捕りや炭焼きなどで児童と交流してきた。 卒業生で郷野地域振興会の広下智文(さとふみ)会長(75)は「子どもは地域の宝。年々、児童が減り、やむを得ないと思うが、学校が無くなると地域が寂れるのでは」と心配する。川根小PTAの藤本悦志副会長(38)も「小さな学校でも、地域で子どもを育てた方がいい」と地域と教育の結びつきを強調する。 遠距離通学を懸念する声も大きい。同市高宮町の来原小PTAの高野法雄会長(53)は「統合先まで10キロ近く離れ、子どもの足では歩けない。最近はクマの出没情報もある」と危ぶむ。 市はスクールバスや、市の路線バス「お太助バス」活用を視野に入れるが、具体策づくりはこれからだ。 ▽「統合後」論議を 広島大大学院教育学研究科の七木田(ななきだ)敦教授は「子どもの成長にとって大勢の中でもまれることは必要。地域の思いもあるだろうが、子どもの将来を考えると統合せざるを得ない面がある。ただし、地域との合意が必要。統合後の教育のあり方などを提示し、論議すべきだ」と指摘する。 市教委は最終的な推進計画を近くまとめ、4月から地域説明に入る予定。その際、今なぜ再編なのか、という説明が欠かせない。周辺部の通学手段をはじめ、保護者が納得できる具体的な考え方を示し、十分に話し合っていくことが必要だ。
(2011.1.10)
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