広島県内 職業選択ままならず 非行少年 民間事業主の下で労働 家庭裁判所に送られた非行少年が一定期間、民間事業主たちの下で働く「補導委託」の受け皿が県内で不足している。少年に立ち直るきっかけを提供する制度。スタートから60年以上たつが、裁判所のPR不足もあり、職業の選択肢はほぼない状態だ。家裁はさらなる事業主の協力を呼び掛けている。 製造業を営む広島市南区の河野征夫さん(66)は、創業者の父の代から委託を受け、少年を自宅近くのアパートに住まわせている。常に1人か2人はいる状態。朝夕の食事は妻洋江さん(66)の手料理を食べてもらう。1955年ごろから既に300人余りを受け入れた。髪の色や服装などのわずかな変化がうれしいという。 結婚後、子どもを連れて訪ねてくるケースもある。河野さんは「見ていると、性格ではなく育った環境に問題があったと実感する。うちでの経験をいつか思い出してくれたら」と話す。 広島家裁によると、県内の年間委託者数は10人程度。委託先は約10カ所あるが、住み込みで働く場を提供しているのは河野さんだけだ。家庭に恵まれない少年の場合、現状では岡山県内にも行く。慢性的な受け皿不足から、少年にとっては職業の選択肢はほとんどない。 この現状を受け、広島家裁はホームページなどで協力を呼び掛けるが、反響はない。河野郁江次席家裁調査官は「少年たちは働くことにより、社会の役に立てることを知る。一人一人の性格や希望に合った受け皿を整えたい」と事業者の理解を求めている。(門戸隆彦)
(2010.12.10)
|