中国新聞


きめ細かな指導 学習補助員浸透
安芸高田市教委 導入3年目
放課後に個別対応/理解度別にプリント


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4年生の授業で児童を指導する補助員の大前さん(手前)と担任の岡部教諭(奥)

 安芸高田市教委が市内の小学校に配置した学習補助員が、試行から3年目を迎え、内容を充実させている。学力差が出やすい小学3、4年生を中心に担任教諭の教務を補助する役割で、児童に寄り添う細かな指導が児童の信頼を得つつある。

 甲立小4年生は7月20日、1学期最後の授業で小数の足し算を学んでいた。担任の岡部良教諭(38)が黒板の前で教える一方、補助員の大前美果さん(27)は12人の児童の机をのぞいて回る。

 「どう、できた?」。頭を抱える子にはヒントを与え、皆の参考になる解き方を見つけると「次の発表はこの子に」と担任に推薦。児童目線で分かりやすい授業を支える。

 「昨年度の経験で、つまずくところが分かってきた」と大前さん。「表情や変化を見逃さないことが大切。見守られている安心感を与え、意欲を引き出せれば」と話す。

 学習補助員制度は浜田一義市長が公約で掲げた事業として2年前に開始。現在全13小に14人を配置する。教員志望者や退職した元教員たちが務める。

 ▽教材作りにも反映

 国語と算数について、授業での担任補助▽放課後学習の指導▽教材作成など授業外教務―の3業務を担う。授業で理解度を確かめ、つまずいた点は放課後に個別指導。教材作りにも反映させる。

 基礎学力の定着が目的だが、3年目を迎え内容も進化している。理解度に応じた指導をしようとプリントを3種類作るようになった。居残りイメージのある放課後学習も2人で指導。教育内容が大幅に増える新学習指導要領への移行が完了する来年度を見据えて、これまでの基礎を固める取り組みも始めた。

 市教委の2月末のアンケートによると、放課後学習を受けた児童の94%が「理解が進んだ」と答えた。実際、「解けずに空欄のままのプリントを埋めたい」(甲立小)と積極参加したり、「放課後は遊びたい。だから家で勉強することにした」(吉田小)と家庭学習につながる例も出ている。

 市内最多の児童数388人の吉田小では5、6年計4クラス126人を2人の補助員で受け持つ。新本信之教頭(49)は「担任のカラーに任せていた授業が、2人で複眼的に児童を見る形になった。質のそろった授業ができている」と見る。

 だが大人数ならではの悩みもある。

 ▽打ち合わせに課題

 同小の放課後学習には昨年度、1学年15人以上が志願。補助員1人では指導し切れないため今年は児童を3、4人に絞って始めた。家庭学習の習慣を付けて早く放課後学習を「卒業」させ、次の児童を受け入れる筋書きだ。

 また、安全確保のための集団下校時間が午後4時15分に迫る。6時限が終わる同3時35分の後、放課後学習に費やせる時間は約30分しかない。補助員の栗原町子さん(57)は「理解できたのでもう1問という時に終了。授業並みの45分あれば」と残念がる。

 担任との打ち合わせが授業前後の数分間と短いのも悩み。児童の状況を記録する日誌で連携を確保する。

 市内で14人の補助員を活用する年間事業費は2740万円。市教委学校教育推進室は「財源も現場も制約がある中、補助員の使命感で成果が出ている状況。研修などでさらに指導力を高め、効果を上げたい」としている。(澄田真)

(2010.8.2)


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