中国新聞


小学校統合 見えぬ行方
広島市 対象5校 地元が反対運動
市教委、財政負担を懸念 住民、「地域と学校一体」


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「ふくろう塾」に集まった井原小の児童。宿題やゲームをして過ごすほか、小松さん(左端)から俳句や漢文も学ぶ

 学校統合を盛り込む広島市教委の学校適正配置計画策定が遅れ、先行きが不透明になっている。2009年度末を当初目標にしていたが、1月公表の素案で近隣校に統合するとされた5小学校の地元で反対運動が起きた。地元は地域と学校は一体として存続を求め、市教委は学校運営の効率化が必要と主張。接点は見いだせない状況が続いている。(有岡英俊)

 「児童数や学校施設の都合で、地域の実情を配慮していない」

 3月下旬、市教委が統合対象の志屋小(安佐北区白木町)の地元で開いた説明会。住民約40人から存続を求める声が相次いだ。市教委は「一定規模の学級の方が、表現力やコミュニケーション力を磨く機会が増える」と繰り返すにとどまった。

 説明会は、中区の基町小に続き2カ所目だった。着地点を見いだせそうにない議論。いずれの地元も学校を地域ぐるみで支えている自負がにじむ。

▽放課後に「塾」運営

 やはり統合対象校の井原小(安佐北区白木町)と地域の関係はその一例だ。留守家庭の児童が集まる「ふくろう塾」は住民が運営する。塾長小松英明さん(65)たち2人が放課後の約2時間、学校近くの事務所で25人に勉強を教える。長期の休みに野外活動も開いた。お年寄りも加わり、世代間交流の場にもなっている。

 地元では素案公表から1週間後の1月末、存続を求める会ができた。保護者たちは出身者に声を掛け、今春、2家族のUターンの後押しをした。

 小河内小(同区安佐町)の地元は、統合への危機感から独自の活性化策に力を入れる。地域おこしグループ「Oプロジェクト」が都市住民向けに地域資源観察会を7回開く。6月の祭りでは、県内外に住む地元出身者を案内する。

 安福孝昭代表は(71)「地域の魅力を見直してもらい、Uターンのきっかけになれば」と願う。子どもがいる世帯を呼び込み、統合を食い止められたらという切実な願いである。

 基町小の地元でも6月5日、あらためて学校の必要性を共通認識にするため、「学校と地域」をテーマにシンポジウムを開く。

 団地造成などによる小学校の分離開設も一段落、少子化を背景にした統廃合へと転換期を迎えている。市内の児童は09年5月1日現在、6万7026人。ピークの1982年度の10万6253人から4割近く減少している。

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▽具体的な提案必要

 市教委によると、450人規模の平均的な小学校の運営費は年間約2億7千万円。児童1人あたりに換算すると平均60万円。小規模校では600万円かかるケースもある。「全市的なバランスも考える必要がある」(市教委施設課)。

 07年度から12年間かけて進める校舎耐震化と空調設備の整備費は計約280億円の見込み。市財政は厳しく、統廃合は待ったなしという。浜本康男教育長は「今は教育現場や地域にとっても不安定な状況。一日も早く解消したい。大方の同意を得て、速やかに計画を策定したい」と話す。

 ただ「教育環境の改善」で地域を説得するには不十分だ。統合後の地域の不安をどう解消するのか。効率化追求の背景にある財政状況を説明したうえ、通学方法や教育プログラムなど具体的な提案をしていく時期が来ている。


クリック 市立小中学校を「1学級20人程度」にする目標を立て統廃合を検討。まず、2009年5月時点で、@小学校11学級、中学校8学級の基準以下A15年5月時点の推計でも基準以下―の30校を選んだ。さらに受け入れ可能な近隣校があるとして、中区の基町小は白島小、安佐北区の井原小、志屋小は高南小、小河内小、久地小は飯室小に統合する方針を示した。いずれの地元でも統合反対の住民組織が署名活動を展開。市教委に存続要望書や要請書を提出している。

(2010.5.10)


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