食農教育で知る命 庄原の小中校 導入相次ぐ
庄原市が、地域の農業と食育を結びつけた「食農教育」に力を入れている。アイガモ農法で命をつなぐ大切さを知り、地域住民との交流で古里の誇りにも触れる。食への関心の高まりは、偏食解消や生活習慣の改善にもつながる。自主性や学習意欲の高まりなど、波及効果も見え始めている。(戸田剛就) 庄原市東城町の粟田小は2009年度、市の「食農教育モデル事業」の指定を受け、全児童でアイガモ農法に取り組んだ。1月25日は給食でアイガモを味わった。 指導を仰いだ地元の農業藤本聡さん(31)から「命をいただきます」をテーマに食と農、命の連鎖についての講話を聞いた。「かわいそうだけど私の命になった」「アイガモさんありがとう」。児童は自らの言葉で命の重みをかみしめた。 併せて同校は、給食への地元食材の積極活用も図った。趣旨に賛同し、無償で野菜や果物を提供してくれる住民もいた。「食農は地元とのつながりや地域の誇りを感じられる最高の教材だ」と津田泰成校長。ミミズを使った土づくりなど、新たなプランも描く。 食農教育モデル事業は05年度、農業後継者育成を目指し、小中学校を支援する狙いで始まった。農業従事者と保護者、学校でつくる委員会が、総合的な学習の時間を使う食農教育の推進計画を策定。市は、肥料代や作物の苗代などを、年間4万円を上限に補助する。初年度からの導入校はトータルで6校にとどまっていたが、09年度は単年度で10校が導入した。 ▽新メニュー考案 高野リンゴの栽培と新メニューの考案(高野小)、学級園で育てた野菜の販売(東城小)…。栽培、収穫、調理、販売を通じて理科、社会、算数などを組み合わせた体験学習となっている。 「栽培や販売法を子どもたちが話し合うことで、考える力が養われ、他の授業にも意欲的になった」。高野小の舛岡慶子教諭は自主性の芽生えを喜ぶ。 近年、家庭では食習慣の乱れも進む。教育現場での食育の重要性は増している。 同市は農業地帯だが、若い世代の農業従事者は少ない。総菜やインスタント食品に頼る家庭も多い。子どもの食の経験は浅くなりがちだ。 ▽自作野菜で朝食 こうした中、学校単位で食習慣の改善を図る動きもある。同市永末町の永末小は、6年前から児童が年1回、全校で朝食作りに取り組む。いつもより30分早い午前8時に始業。学級園で栽培した野菜を使い5、6年生が調理し、下級生が配膳(はいぜん)する。児童には「自分で作った野菜はおいしい」と好評だ。 保護者には朝食の重要性を訴え、家庭と連携も図った。バランスがとれた朝食の摂取率は04年度調査の6割から09年度は9割に向上した。佐々木妙子校長は「家庭事情は変えられない。自分で生きる力を身につけさせることも教育」と話す。 市は食農教育モデル事業費をこれまでの40万円から、10年度は60万円へ拡大する。市農林振興課は「農業と食への関心を高めるため、多くの学校に手を挙げてほしい」と呼び掛けている。 (2010.3.1)
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