主幹教諭制度 評価と戸惑い 広島県内186校で配置
山口県を除く中国地方の公立小中高校に「主幹教諭」が導入され、10カ月が経過した。広島県内では2割にあたる186校で、「教諭のまとめ役」を担っている。授業を受け持ち、学校運営もこなす幅広い職務に戸惑いの声も上がっている。 安古市高(広島市安佐南区)の三谷浩雄主幹教諭(49)は、学年主任2人と、新年度に3年生となる生徒の指導方法について話し合った。「受験生としての心構えをいかに身に付けさせるか」。主体的に学習に取り組む姿勢づくりのため、個別面談に力を入れ、春休みに実施する学習合宿への参加を促す方針を決めた。結果は学年主任が各担任に伝えた。 ▽相談もしやすく 三谷主幹教諭は「以前は、学年主任同士で話をしても互いの立場が対等で遠慮し合い、意見がまとまりにくいこともあった。主幹教諭として現場を円滑にリードできるよう努める」と語る。坂本真平校長も「教員間の連絡や相談がしやすくなった」と評価する。 主幹教諭制度は学校教育法の改正に伴って導入された。学校の組織力強化と指導体制の充実を目指している。具体的な役割は、一般教諭の指導、教頭の補佐、地域との連携、保護者への対応など多岐にわたる。自ら教壇にも立つ。県教委教職員課の篠田智志課長は「指示系統を明確化し、社会の変化や保護者の要望に迅速に対応できる組織を目指す」と説明する。 新たな肩書に戸惑う現場もある。広島市内のある中学校長は「主幹教諭といっても配置は1人だけ。それなのに学校の課題は山積している。問題が起きるたびに走り回る、何でも屋になっている」と明かす。 市教育センター(東区)の島本圭子・主任指導主事は「何から手をつければいいか、どこまで踏み込めばいいか分からない主幹教諭もいる」と話す。同センター主催の「学校運営推進リーダー育成研修」に参加した主幹教諭も「前例がなく、動き方がよく分からない。マニュアルがほしい」と切望していた。 ▽管理強化反対も 従来の学校組織は、管理職が少なく、一般教諭が多い構成で、管理職を取っ手になぞらえた「鍋ぶた形」と呼ばれていた。主幹教諭という新たな肩書が加わり、企業に似た「ピラミッド形」へと近づきつつある。 こうした流れに、県教組の小早川健委員長は「学校は企業と違う。管理強化につながる」と危惧(きぐ)する。「管理者ではなく、現場で子ども一人一人と向き合う教職員こそ必要だ」と制度に反対する。 広島大大学院の林孝教授(学校経営学)は、導入した学校ごとに制度の運用状況を検証する必要性を指摘。「県教委が情報を集めて、各校の実情に合った主幹教諭像ができるようサポートしなければならない」と話している。(久行大輝)
(2010.2.1)
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