中国新聞


新型インフル 子を守るには
広島の舟入病院 岡野小児科部長に聞く


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「インフルエンザにかかったら保護者は子をよく観察してほしい」と訴える岡野部長

 新型インフルエンザが中国地方でも流行シーズン入りした。ほとんどの学校で授業が始まる9月からは、学校での感染拡大が心配される。新型インフルエンザを家庭でどう予防し、子どもがかかった場合にどう対応するか、重症化が懸念されるインフルエンザ脳症の兆候をどう見極めるか。広島市立舟入病院小児科の岡野里香部長(47)に聞いた。(平井敦子)

 ▽予防するには

 新型インフルエンザは、ほとんどの人が免疫を持っていないので感染すれば発症する人が多く、大流行する可能性があります。

 新型のワクチンがまだ接種できない今、できることは、手洗いとうがいです。外から家に帰ったら、必ずしましょう。そのほか、集団で過ごしている場合は、1日3回、食後の歯みがきタイムに、うがいを心掛けるといいでしょう。

 乳幼児で、のどを洗ううがいができない子どもの場合は、口に水を含んで「くちゅくちゅぱ」から始めましょう。周りにいる人が予防に注意してあげてください。

 発症していない人が屋外でマスクをむやみに着けなくてもいいと思いますが、病院に入る時や、満員電車や、バスなど人が密集している場所では着用しましょう。マスクは、感染した人やせきが出る人、風邪っぽい人こそ着用するべきで、人にうつさないためです。「せきエチケット」を徹底しましょう。

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<上>広島市立舟入病院の小児科診察室で行われているインフルエンザの診察
<下>広島市立舟入病院の正面玄関。大きな看板を掲示し、新型インフルエンザで受診する患者に、マスクの着用を呼び掛けている

 ▽かかったら

 季節性インフルエンザでは、飲み薬のタミフルは異常行動の副作用が懸念されているために10代の患者は原則、使用中止となりました。代わりに吸入薬のリレンザを処方することが多くなっています。

 国は、新型インフルエンザについては10代患者にもタミフルを使用できる―との見解も示していますが、もともとインフルエンザは治療薬を使わなくても大半の人が治る病気でもあります。薬については医師とよく相談してください。

 学校や幼稚園、保育所などは、熱があるうちはもちろん、解熱後2日間は休みましょう。発症から1週間、が一つの目安です。

 ▽注意すべきは

 子どもがインフルエンザにかかったときに最も心配なのは急性脳症になることです。5歳以下に多く、約10%が死亡し、約25%がてんかん、知能低下、手足のまひなどの後遺症となる、といわれている怖い病気です。

 兆候として、けいれん▽意識障害(反応が鈍い、名前を呼んでもぼーっとしているなど)▽異常な言動(両親がわからない、幻視・幻覚的な訴えをする、意味不明な言葉を発するなど)―があれば夜中でもすぐに、小児科を受診してください。救急車を呼んでもいいでしょう。

 ボルタレンやポンタールなど一部の解熱剤は脳症の予後を悪くするので、解熱剤は勝手に使わず、医師に相談して使いましょう。

 脳症は発熱して早いうちになることが多く、短い間に進みます。インフルエンザウイルスに対して免疫が過剰に働き、脳に悪影響をもたらす、とされています。疑いがあればすぐ治療に入り、重症の場合は集中治療室(ICU)で薬や体の管理により過剰な免疫を抑えます。

 保護者の方は、子どもがインフルエンザにかかったら、しっかり観察し、普段と違う様子がないか注意してください。


子どもたちの新型インフルエンザ対策のポイント(岡野部長の話から)

(1)手洗い、うがいは、帰宅時と1日3回食後に心掛けましょう
(2)10代患者の治療薬使用は医師と相談を
(3)発症後、学校や幼稚園、保育所は、少なくとも解熱後2日後までは休みましょう
(4)発熱などインフルエンザ症状に加えて、けいれん、意識障害、異常行動があったらすぐ小児科へ


クリック インフルエンザ脳症の発生状況 新型インフルエンザによる急性脳症の患者は、25日までに全国で10人が確認されている。そのうち年齢が分かっている8人は4〜14歳。厚生労働省の研究班によると、1年に100〜300人の子どもがかかり、1歳をピークに幼児期に最も多く発生するという。新型の感染が拡大すれば患者数も増えるとみて、日本小児科学会が注意を促している。

(2009.8.30)


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