周南市の住吉中ルポ
地域のボランティアが学校に入り、学習指導の補助や環境整備などで教員を支える「学校支援地域本部事業」が全国各地で活発になっている。文部科学省の委託事業として2008年度に始まり、中国地方5県では104本部が活動中だ。45人がボランティア登録し、花壇の世話などで生徒との交流を深める周南市住吉町の住吉中で成果や課題を見た。(山瀬隆弘) ▽交流進み生徒に落ち着き 11日午後、住吉中に年配の女性3人が訪れた。胸元には「すみよし応援し隊」の名札。正門脇の花壇に集まり、高さ20センチに育ったサルビアの苗を植え始めた。1時間20分後に、授業を終えた生徒約10人が合流。女性たちと世間話を楽しみながら根元に土をかけ、水をまいた。 活動中、女子生徒が「そこのおとこー」と男子生徒を呼んだ。「男性でしょ。言葉遣いに気をつけないと」と諭したのは木村紀美子さん(73)。同校を57年前に卒業した木村さんは「行儀の悪さをしかるのは地域の大人として当然です」と目を細めた。 住吉中の地域本部は昨年6月に発足した。05、06年度のPTA副会長だった戸倉ひとみさん(49)が学校と地域の橋渡し役となる「地域コーディネーター」を引き受けた。婦人会など地元団体の代表が集まる場で協力を要請。ボランティアを集めた。 ■自らあいさつ 10月に校内の環境整備がスタートした。花壇にスイセンやルピナスを植えてきた。卒業式で校内を飾るサイネリアも鉢で育てた。ほぼ週1回、ボランティア6、7人が集い、生徒も多い時には15人程度が手伝った。 「最初は緊張していた子どもたちも、最近は相手からあいさつをしてくれるようになった」と戸倉さん。生徒にとっては祖父母と同世代かそれ以上の70〜80歳代が多いボランティアとの会話が弾み、帰りたがらないケースが増えているという。 4月から花壇の世話に加わった3年山本菜津子さん(14)も「普段、近所の人と話す機会が少ない」と明かし、「いろんな豆知識や地域の昔話などを聞けるのがいい」と世代間交流を楽しむ。 山永秀治校長(57)は「地域本部が始まり、以前よりも子どもたちが落ち着いてきたと耳にする」と成果を強調する。核家族化の進展や教職員が忙しくなるなど大人の目が生徒から遠のく中、「地域の力が借りることができ心強い」と感謝する。 ■人材活用に難 ただ、2年目を迎えて課題も見えてきた。一つは、協力を申し出た45人を十分に活用しきれない悩みだ。 地域本部は「環境整備」と「学習支援」の2分野でボランティアを募集した。花壇の手入れや月1回の読み聞かせ、テスト前などの自主学習サポートが定着する一方で、天体観測などの知識を生徒に伝えたいと希望する協力者の出番がまだ少ない。山永校長は「説得力のある話ができる方も多い。もっと役立てたい」と言う。 たった1人のコーディネーターに頼り切っている面も課題だ。戸倉さんは「私がいなくてもボランティアが自由に学校に出入りできる雰囲気にならないと長続きしない」と指摘。ボランティア研修会を計画したりPTAへの協力要請も検討したりしてすそ野の拡大を図っている。
(2009.6.22)
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