中国新聞


はだしでラン 育てる楽しみ
根付く校庭芝生化
尾道の山波小 親子ら世話 低コストに


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プレートで育てた芝の苗を校庭に移植する山波小の児童や保護者

 子どものけが防止や体力向上などを目指して校庭に芝を植える学校が全国で急増している。尾道市山波(さんば)町の山波小(福間勝也校長)では、昨年から児童、保護者、教職員が一体となって低コストの芝生化を進める。全児童が芝苗を育て、植え付け作業などをして、環境学習や情操教育の効果も期待している。

◇   ◇

 山波小は昨年、試験的に校庭約8千平方メートルのうち1千平方メートルを緑化した。今年はさらに3千平方メートルの芝生化を計画。全児童約320人は4月から、一人ずつ育苗用プレート(縦30センチ、横60センチ、深さ4センチ)で苗を育てた。

 6日、6年生と保護者、教職員の約130人が育てた苗を校庭に移植。株を小分けしながら、30〜50センチ間隔で植えた。育成前の苗をじかに植える方法もした。同じ作業を21日までの毎週末、学年ごとに実施する。

 苗や肥料代を合わせた植え付けまでの経費は10万円で、同小の育友会(PTA)が負担した。作業に業者を介さないことでコストダウンを図った。今後は水や肥料をやりながら2、3カ月でじゅうたん状に広がるのを待つ。三浦由佳さん(11)は「はだしで駆けっこしたら気持ちよさそう」。母親の恵子さん(44)は「緑がたくさんあるのはいい。芝刈りなどできるだけ手伝いたい」と話した。

 ▽体力づくりに

 テレビゲームの普及で、子どもが屋外で運動する機会が減った。学校側は「芝生の上をはだしで思い切り走らせ、体力づくりやストレス発散、集中力の向上につなげたい」と期待を込める。

 苗の育成も教育の一環だ。児童は育苗用プレートに名札を挿して毎朝水をやった。成長を見守り、「生命の尊さや自然を大切にする心、自分が育てる責任感を持たせたい」との思いがあった。

 福間校長は心の変化も感じている。「掃除の時間、自分以外のプレートに生えた雑草を抜く児童がいた。友達を助けようとの気持ちも育っている」

 育友会は昨年12月、全児童を対象にアンケートを実施。332人のうち320人から回答を得た。うち229人(71・6%)が「校庭を全部、芝生にしたい」と答えた。「はだしで走れる」「転んでも痛くない」などが主な理由だった。

 児童たちの声を受け育友会が動いた。今年3月、約100万円で延べ約400メートルの散水設備を校庭に埋設。保護者と教職員による作業で経費を抑えた。新宅康生会長(42)は「地域の人とも草刈りや施肥などの管理ができれば」。芝生の校庭をコミュニティーの場としても生かす考えだ。

 ▽全国で約2倍

 文部科学省によると、全国の公立学校で300平方メートル以上を芝生化した学校は、昨年5月時点で1506校。調査を始めた2002年度の865校と比べ2倍近くに増えた。同省企画・体育課は「外遊びが増え、転んでもけがをしないなどの利点に、学校や教育委員会の理解が深まっている」とみる。

 尾道市の半田光行教育長は「『行政がおぜん立てする時代』からの転換例として理想的だ」と評価。学校や保護者らが主体的に子どもたちの環境整備や地域づくりに取り組むモデルケースにもなっている。(田儀慶樹)


クリック 低コストの芝生化 サッカー場などで使用される繁殖力の高いバミューダグラス(品種ティフトン)の苗をプレートや育苗ポットで育て、成長した苗を校庭などに間隔を空けて植え繁殖させる。高麗芝を敷き詰める方式に比べて経費が安い。

(2009.6.8)


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