議論を通し学び方知る
▽知識偏重から脱却 目的意識明確に 三次市大田幸町の塩町中が独自の「振り返り学習」に力を入れている。生徒に授業から何を学び取るべきかを自覚させる試み。2週間に一度のペースで、生徒同士の議論を重ねながら、学習が知識だけでなく、「表現力」や「思考力」などの育成につながっていることに気付き、「考え学ぶ姿勢」を身に付ける。 「振り返り学習」の時間は「塩中タイム」と呼んでいる。三年生の本年度初の塩中タイムは五月七日だった。 ▽意見交換で整理 テーマに取り上げたのは四月に学んだ英語の受動態。教科書に記された「点字は多くの人に使われている」などの例文を使い、受け身の表現を学んだ。 塩中タイムでは「授業がどんな能力を身に付けるのに役立ったか」について議論した。英語担当の西田弘栄教諭が事前に生徒に書かせた回答の一つを紹介した。「点字はとても重要だと分かった」。他の生徒が「これでは授業の感想だけになっている」と指摘した。 別の生徒が意見を発表した。「どうやって受動態をつくるか考えるのは『思考力』だ」。西田教諭は「なぜ『思考力』と言えるの」と問い直す。生徒は「受動態をつくる時は、能動態と文の構成と比較をして考えるから」と答えた。 塩中タイム後、西田教諭は「事象を比較して考えることが、思考力の一つの要素だという認識が、生徒の中にできた」と成果を説明した。 ▽学習意欲が増す 塩中タイムは二〇〇五年度から、総合的な学習の時間に導入した。学習から身に付いた能力や、その理由、他教科にどう生かせるかなどを自己分析して「塩中カード」と呼ぶ紙に記す。教員のチェックや生徒同士の意見交流を交えて、考えを整理していく。 同中は「考え学ぶ姿勢」の育成に必要な能力を「発見力」「情報獲得能力」など、九つに分類する。 その効果について、教務主任の狩山敏宏教諭は、三年生が毎年行う外国人への英会話インタビューを例に挙げる。「塩中タイムを通じて、生徒はこの授業が表現力と人間関係形成力の向上に役立つと気付く。学習の目的が明確になり、学習意欲も増した」という。 ▽考えて道筋描く 生徒は分類した九つの力を意識することで、課題解決に当たって、どの力を使えば良いのか―を自ら考え、解決の道筋を描けるようになる。例えば、「発見力」で問題点を見極め、「情報獲得能力」で情報を検索し、「思考力」でデータを比較活用するという具合だ。 狩山教諭は「塩中タイムを、一般教科の知識や技能が、将来どう役に立つのか考えるきっかけにさせたい」と力を込める。(見田崇志)
(2009.5.18)
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