中国新聞


学校図書館 機能を充実
島根県が全国初
公立小中全校に司書配置計画


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学校図書館で、楽しみながら詩への理解を深める東出雲中の生徒

 島根県は本年度から5年間、公立小中学校全347校の図書館に学校司書またはボランティアを配置するため、人件費の一部を市町村に交付する。全国初の試みで、子どもの豊かな心や思考力の育成を目指す。(和田木健史)

 ▽「調べ学ぶ」授業支える 先進校の東出雲中

 司書教諭と協力して学習充実を図る学校司書か、ボランティアを配置する学校に対し、雇用形態や規模に応じて一校当たり年二百万―二十万円を交付する。全市町村が全校に導入する方針を示している。学校司書たちは、図書館の(1)資料などを調べて学ぶ「学習・情報センター」(2)好きな本を読める「読書センター」―の両機能を充実させる。

 県教委の目指すモデルの一つが東出雲中(東出雲町)。図書館の授業活用の先進例として全国で知られる。

 ▽詩を並べ替え理解

 「意味がつながってない」「ここはあっちょる」。四月下旬、同中の図書館に一年生三十七人の声が響いた。一行ずつに分解された詩を、内容を考えて正しく並べる授業だ。六グループに分かれ、成果を朗読した。

 授業は、並べ順や朗読の強弱を考え、楽しみながら詩の本当の意味をくみ取るのが狙いだった。学校司書の実重和美さん(52)が提案し、野津明美教諭(44)がともに実践した。

 実重さんは素材選びや資料集めでも授業を支え、「学習・情報センター」機能を発揮している。野津教諭は「学びを活用できて初めて『分かった』といえる。そのために使えるのが図書館。授業の組み立てから相談している」と話す。

 二〇〇五年度の赴任後、「読書センター」機能も充実させた。読みたい本のリクエスト制度を始めるなどし、〇八年度の貸出冊数は約一万八千五百冊に上った。〇四年度の約二十五倍に当たる。

 東出雲町は〇六年度には町内の全三小学校にも専任の学校司書を置くなど、町を挙げて学校図書館充実に取り組んでいる。一方、県内の公立小中学校で〇八年度に学校司書がいたのは、小学校が二百四十五校中で七十二校(29・4%)、中学校は百二校中で十八校(17・6%)にとどまっていた。

 ▽担当者の研修大切

 学校司書たちの配置について、学校図書館に詳しい八洲(やしま)学園大(横浜市)の高鷲忠美教授は「ただ、担当者の研修が大切になる」と指摘する。県立図書館は現在、今回配置する学校司書たちを対象に、貸し出し業務など基礎から研修を行っている。

 各校の蔵書の確保や公立図書館との連携強化も課題だ。高鷲教授は「うまく機能すれば、全国への模範となる」と期待している。


島根県立大短期大学部・堀川教授に聞く
情報活用能力 育てる役割

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「学校図書館の活用により、主体的に調べたり考えたりする力が伸びる」と話す堀川教授

ほりかわ・てるよ 専門は図書館情報学。島根県子ども読書活動推進会議委員長。東京大大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学。57歳。松江市在住。

 読書活動推進の狙いや学校図書館の果たすべき役割について、図書館教育に詳しい島根県立大短期大学部の堀川照代教授に聞いた。

 ―なぜ読書活動を進めるのですか。

 生きていく上で大切な言葉の力を育成するためだ。「聞く」ことで目に見えないものをイメージする力がはぐくまれる。「読む」ことでは豊富な語彙(ごい)を身に付けることができる。人の気持ちを想像し、適切な言葉で「話す」「書く」コミュニケーション能力につながる。

 ―なぜ今、関心が高まっているのですか。

 経済協力開発機構(OECD)の生徒の学習到達度調査で、日本の子どもは読解力が落ちていると報じられた。また、読書、活字離れも言われている。その中で国が政策として進めている。

 ―学校図書館の役割は何ですか。

 子どもと本をつなぎ、「楽しむ」「調べる」という読書の目的を達成させることだ。「楽しみ読み」は豊かな人間性、「調べ読み」は情報活用能力を育てる。両方合わせて生きる力といえる。

 ―どうして情報活用能力が重視されてきたのですか。

 学力観の変化が背景にある。従来は「何を学んだか」という知識重視だったが、現在は未知の状況に対応するため、必要な情報が何かを判断し、入手し、消化し、行動する能力が求められている。

 ―どういう施策が必要ですか。

 まずは司書教諭と学校司書の配置。学校司書は学校図書館の運営に責任を持ち、利用しやすい環境を整え、子どもが必要とする情報や資料を提供する。司書教諭は、学校全体を見渡し、教育の中でどう学校図書館を生かしていくか考え、実践する。これまで学校図書館を教育に生かしたことのない教師も多いので、活用方法に関する研修も必要だ。

(2009.5.11)


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