中国新聞


考える力育てよう
新教科「言語・数理運用科」10年度導入
広島市の試み


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「子どももお年寄りも楽しめます」。独自のお出掛けプランをアピールする児童

 子どもの「考える力」をはぐくむため、広島市は二〇一〇年度、独自に開発した新型教科「言語・数理運用科」を導入する。対象は小学五年―中学三年生。具体的な内容や効果を、モデル校の実践から探った。(田中美千子)

 「今日はサザエさん一家のお出掛かけプランを仕上げるよ」。中区の袋町小五年二組であった公開授業。森貞小百合教諭(45)が呼び掛けると、児童二十一人が一斉にファイルを開いた。中には、アストラムラインの時刻表や運賃表。沿線の施設ガイドものぞく。

 課題は七人家族向けの外出プラン作り。アストラムラインを使う▽広島広域公園や市交通科学館などから二カ所を選び、九時間以内に回る―などの条件下、一人一人がプランを練る。

 「旅行会社の人になった気分でやろう」と森貞教諭。児童は「プランは所定の時間内」「費用がかかりすぎないか」に注意し、利用便を決め、運賃や入館料を計算していく。計画を効果的にアピールする文案も考えた。

 特例校制度に認定

 算数や国語で学んだ知識を、課題の解決に生かす力を養う―。市教委はそう言語・数理運用科の目的を掲げる。「思考、判断、表現という三つの力を伸ばしたい」と指導第一課は強調する。

 新教科導入は、文部科学省の特例校制度に認定された「ひろしま型カリキュラム」の中核に据えた。一昨年、現場教員に学識経験者を加えた研究会を発足し、学年ごとの指導要領を策定してきた。

 背景には、小中学生の思考力低下が指摘される現状への危機感がある。例えば、六月にあった全国学力テスト。全国的な傾向と同じく、市でも応用力が求められる問題の平均正答率が低かった。基礎知識を問うた部分に比べ、全学年・教科で13・7―19・6%も下回った。

 市教委は昨年、袋町、千田の小学校二校で試行を開始。指導第一課は「両校とも校内テストで応用力の向上が確認できた」と手応えを感じる。導入後は各学年で、年三十五時限を充てる予定だ。

 基礎学力充実図る

 課題も残る。袋町の公開授業後の研究会。教員の一人は「考える力がついたかどうか、評価が難しい」と問題提起した。児童、生徒の受け答えから判断するのか、テストで測るのか。市教委も検討課題としている。

 ほかに「基礎学力が不十分では効果が出ない」「広島市は同じ年に、小学校高学年で英語を必修化する。教員の負担が大きい」などの声も出た。

 市教委は小学一―四年のカリキュラムに計算や漢字の学習時間を新たに盛り込み基礎学力を充実する▽教諭の負担軽減策として新教科の細かい指導案も配る―などの方策で補う方針を示している。

(2008.12.22)


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