福山市民病院の婦人科常勤医に着任 医師 中山雅人さん
常勤医が不在だった福山市民病院(蔵王町)の産婦人科に今月、中山雅人医師が着任した。産婦人科長として平日、婦人科外来の診療に当たる。全国的に産婦人科医が不足する中、備後の中核的医療機関である市民病院を新たな勤務場所として選んだ理由や今後の抱負を聞いた。(野崎建一郎) ―なぜ市民病院に職場を替えることにしたのですか。 勤めていた倉敷市の三菱水島病院が規模縮小などで産婦人科を閉じることになったため、勤務先を探していた。複数の病院から誘いを受けたが、医療機器などの設備が充実し、チームで診療する態勢が整っている市民病院を選んだ。 ―実際に診療を始めた感想は。 医療機器などの環境が前の病院と異なり、電子カルテを使うのも初めて。機材操作の習熟に努めながら、診療をしている段階だ。 ―休止している産科部門を再開する考えは。 市民病院は、救急患者も搬送される。産婦人科医が私一人だけで対応するのは難しい。やる以上は万全の態勢で救命をするべきだと考えている。現状で出産を取り扱うのは無理だ。当面は婦人科のみの診療となる。 ―市は引き続き産婦人科医の確保に努める意向です。複数の医師態勢になった場合はどうですか。 産科部門を含めた全面再開に向けた市民の期待が高いのは承知している。人員がそろえば救急も含め出産を取り扱えると思う。ただ、私は年齢などの理由から、個人としてのかかわりは限定的になると考えている。 ―産科部門の休止が続く中、婦人科として常勤する意義は。 患者は高齢になるほど、複数の診療科にまたがる症状を持つ可能性が高くなる。「この病気は、他院で診てください」では医療サービスとして不完全となる。総合病院としてのサービスを充実させるため、婦人科が加わることは、地域住民の安心にもつながる。できることを地道にやっていきたい。 ―市民病院の産科部門が休止となる背景には全国的な産科医不足があります。解消法はありますか。 出産は本来、一定のリスクがあり、予測不能な事態が起こり得る。結果が悪ければ、分析して再発防止策を練るべきだ。訴訟などで責任者探しをするのは、医療水準の向上につながらないし、産婦人科医を目指す人の減少にもつながる。名案はないが、市民の医療への理解を深めることが大切だと思う。 【記者の視点】将来像の協議必要 福山市民病院は救命救急センターを開設した二〇〇五年以降、県東部の産科救急の中核を担ってきた。市は、中山医師の採用を産婦人科の全面再開の第一歩と位置付ける。今後、さらに産婦人科医が確保できた場合、他病院との役割分担はどうするのか。望ましい医師数や設備はどの程度か。医師会や県、大学などと将来像について協議しておく必要がある。
(2008.12.8)
【関連記事】 |