中国地方 受診控えの恐れ 厚労省調査 保護者が国民健康保険料(税)を滞納したために市町村から保険証を返還させられ、事実上の「無保険」状態になった中学生以下の子どもの数は、中国地方で千八百五十九人に上ることが、厚生労働省の初の調査で分かった。 保険証の代わりに被保険者資格証明書を交付された世帯は、窓口で医療費をいったん全額自己負担し、後日返還を申請する必要がある。窓口負担の重さから、子どもを受診させない恐れがあると指摘されている。 調査によると、中国地方の百十市町村のうち五十市町が本年度、子どもがいる千二百十四世帯に資格証明書を交付した。全滞納世帯に占める割合は五県平均0・6%で、県別では山口と島根が1・4%に対し、岡山は0・2%とばらつきがある。 「無保険」状態の子どもの内訳は、乳幼児三百十九人、小学生九百三人、中学生六百三十七人。県別では広島が最多の六百九十六人で、山口六百九十人▽岡山百九十一人▽島根百七十七人▽鳥取百五人―だった。 市町別では岩国市が三百九十人と最も多く、山口県全体の六割近くを占めた。福山市が二百四十七人で続き、倉敷市百五十九人、呉市百四十二人、松江市百十六人と五市で百人を超えた。 厚労省は今回の調査結果を受け、市町村に対して事情を把握するため保護者との接触を増やしたり、緊急的に有効期間を数カ月間に区切った短期保険証を交付したりするなど、受診控えを招かないような配慮を求める通知を十月末に出した。 資格証明書は滞納者への「ペナルティー」として義務化されたが、交付は各市町村がそれぞれの要綱に沿って判断する。広島市は本年度から基準を「保険料の支払い能力があると確認できた場合」に限定し、結果的に交付はゼロとした。三次市や境港市などは中学生以下は対象外にするなど、受診機会の確保に努めている。 広島県医療保険課は「滞納者の実態に合わせた対応を市町に要請している」とし、岩国市保険年金課は「通知に沿う方向で、要綱などの見直しを検討中」と話している。(加納優) 【注】かっこ内は、子どものいる資格証明書交付世帯が全滞納世帯に占める割合。 調査時点は市町村で異なる
(2008.11.14)
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