今年男女10人を逮捕 保護者・地域と連携急務 福山市内で今年、中学生による教諭への暴行・傷害事件が後を絶たない。一月以降、福山東、福山西の両署は男女十人を逮捕した。生活態度の注意に逆上する、といったケースが目立つ。学校、保護者、地域の連携した対策が急務となっている。(山本堅太郎) 十月八日、市内の中学校で、男性教諭(45)をけるなどしたとして、中学二年女子(14)が暴行の疑いで東署に逮捕された。東署によると、女子は授業に出ずにいたところを教諭に見つかった。その際、かばんの中のたばこを教諭が取り上げたのに腹を立て、暴力を振るった。教諭は七日間のけがを負った。 注意に腹を立てる 「注意されて腹が立った」「先生の態度が気に入らない」。対教諭の暴力で逮捕された十人が供述するのは、そうした動機という。東署生活安全課は「思い通りにならないと、すぐに手を出すケースが増えた」と言う。 相次ぐ事件に、ある校長は「今は男子も女子も関係ない」と戸惑いを隠さない。別の校長は「一部の保護者はしつけを学校任せにしている。教諭の側にも生徒をじっくりと指導する仕事の余裕がなくなっている」と話す。 学校側も対策に努めている。市中心部の中学校は、教諭による生徒への声掛けを強化。教諭は時間が許す限り積極的に校内を回る。問題が起きた場合は複数で対応するなどして、生徒を落ち着かせるよう心掛ける。 市東部では、小・中学校が連携し、児童生徒に生活習慣の改善を呼び掛ける試みもある。あいさつ運動に取り組んだり、校内の掃除を徹底したりと、規範意識をはぐくむ指導に力を注ぐ。 被害届ためらわず しかし、そうした取り組みも対教諭暴力の根絶にはつながっていない。二〇〇五年四月以降、市内の逮捕者は延べ十七人。市教委は「警察への被害届の提出をちゅうちょしない」との姿勢だ。今年の逮捕者の急増には、そうした方針も背景にある。 校内からの逮捕者が相次ぐことに、中学二年の男子(14)は「悪いことをしたら捕まるのは仕方ない」。一方、別の中学三年女子(14)は「ちょっとしたことで捕まる。なのに先生が生徒をたたいても罪に問われんのはおかしい」と反発した。 それぞれの事件からは、学校、保護者、地域の力が発揮されず、かみ合わないまま、暴発してしまう子どもたちの姿が浮かぶ。 市教委も根本的な解決策として、三者のつながりの重要性を挙げる。三好雅章指導課長は「両者へ協力を求め、学校と地域の在り方を考えたい」と話す。 子どもの見守り活動に力を入れる長浜学区防犯連合会の枝広一典会長(61)は「日常から地域と学校が話し合わなければ。地域側が学校へ歩み寄らなければ何も変わらない」と強調。市PTA連合会の池田淳二会長(50)は「学校も保護者も主張をぶつけ合うだけでは、折り合いは付かない。交流を深め、互いを理解することで信頼関係を築くことが重要だ」と主張する。学校から暴力をなくすため、三位一体の取り組みが欠かせない。 ※福山東、西署調べ。学年、年齢は逮捕時
(2008.11.12)
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